開発途上地域における企業の社会的責任:CSR in Asia
このコンテンツは、「グローバルネット」から転載して情報をお送りしています。
無断転載禁じます
※このコンテンツのバックナンバーは、随時掲載予定です。一部記事中にバックナンバーに続いた文章がございますがご了承願います。
(財)地球・人間環境フォーラム : 満田 夏花
広がる波紋と業界・行政の対応
1月8日、TBS「NEWS23」のスクープに端を発した再生紙・年賀はがきの古紙配合率偽装問題。日本製紙、王子製紙、大王製紙、三菱製紙、北越製紙などが相次いで、はがきやコピー用紙などでの偽装の事実を認めたのみならず、製紙会社の業界団体である日本製紙連合会の調査(1月25日発表)によれば、同会員製紙企業17社が再生紙の古紙配合率を偽装していた。本稿では、偽装問題のもたらした影響を概観すると同時に、業界・行政の対応を検証する。
偽装パルプの影響

日本の製紙原料の最大の供給国であるオーストラリアのタスマニア州の天然林伐採地(写真提供=Rainforest Action Network)
(1)消費された森林は年間2,268ha
古紙偽装問題はさまざまな影響をもたらした。まず、きわめて直接的だが見逃されてきた問題として、古紙と偽って使用されたバージンパルプ生産が森林資源に与えた影響が挙げられる。国際環境NGO FoE Japanが2月1日付けで発表した試算によれば、「古紙」とされていたバージンパルプは、昨年10〜12月の期間だけでも木材換算で11万tを超える。これは日本の製紙原料チップの最大の供給地であるオーストラリアのタスマニア州の森林に換算すると、年間にして2,268ha、東京ドーム485個分に相当する。
「タスマニア州の森林は固有種が多く、世界的に見ても生物多様性の価値が非常に高い地域です。同州における天然林伐採の約半分は皆伐によるもので、生産された製紙用材の大部分は日本向けに輸出されています」とFoE Japanの中澤健一さんは言う。
(2)植林すればよいのか
古紙偽装を“オフセット”(埋め合わせ)するために製紙会社に植林をさせようという意見もあるがこれは非常に危険な問題をはらんでいる。
「産業植林地は製紙メーカーが自らツリーファーム(木材農場)と呼ぶように、その生物多様性は原生林より著しく劣ります。用地をめぐっても多くの紛争が生じています。植林によるオフセットではなく、紙需要そのものを抑制していくことが重要です」と中澤さん。インドネシアやマレーシアなどでも植林やプランテーションをめぐる土地紛争は多発しており、その多くで、地元住民の慣習的な土地利用権が侵害されていることは日本では意外と知られていない。
(3)再生紙の信頼性を揺るがす
もっとも憂慮されることが、再生紙の不使用や安易な古紙配合率基準引き下げの議論につながることだ。事実、大手複写機メーカーや自治体では、再生紙の使用・販売を停止する動きが相次いでいる。富士ゼロックスはコピー用再生紙を上質紙などに切り替え、コニカミノルタやリコー、キヤノンなどもすべてのコピー用再生紙の販売を中止している。神戸市は、コピー用紙などをグリーン調達方針の適用外とした。偽装が発覚しているコピー用紙や名刺用紙の納入中止などの対応のほか、多くの自治体で「R100」マークや再生紙表示の削除を行っている。日本が誇る高い古紙配合率への信頼性が大きく揺らいだことは間違いない。
(4)悪者にされた古紙
偽装を行った製紙各社は、古紙の入手が困難になったこと、古紙品質が低下して現在の技術レベルではユーザーから要求される品質(白さや薄さ、強度など)維持が困難になったことを挙げている。
一方、日本製紙などは以前から、「古紙100%は環境にやさしくない」とアピールし続けてきた。理由として、再生紙を製造する際には化石燃料の使用量が増えることを挙げている。製紙業界はグリーン購入法の「基本方針」で古紙原料を「環境に配慮された」バージンパルプに置き換えるように見直すよう環境省に求めてきており、環境省が2007年11月に公表した見直し案でも、これを反映した内容となっている。
これに対しては多くの異論もあり、また二酸化炭素(CO2)排出量のみで再生紙の環境パーフォーマンスを評価することへの批判も根強い。世界の森林資源が枯渇している現状などに鑑みて、古紙原料を安易にバージンパルプに置き換えることは望ましくない。
中国の需要増大などもあり、古紙が入手困難であることは事実だ。また、ときにユーザーから過度の品質要求があることも事実だろう。しかしこの現状と、再生紙の「環境パーフォーマンス」とを混同して論じてはなるまい。
(5)もう一つの「エコ偽装」
なお、偽装は古紙配合率だけにはとどまらない。日本のバージンパルプの消費そのものが森林資源に圧力をかけているという事実を製紙会社はあいまいにし続けてきた。タスマニア問題に取り組む環境NGO、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)の川上豊幸さんは次のように指摘する。
「例えば、日本製紙は『原生林ではないチップによる紙』をうたっていますが、同社が購入を継続しているタスマニアの天然林木材チップ(豪州林業規格AFS認証材)には原生林の木材チップが多数含まれています。これはもう一つの『エコ偽装』疑惑です」
「環境保全活動」でOK? 紙の需要抑制こそ求めるべき
製紙連合会および王子製紙、日本製紙などの大手製紙5社は、1月31日、声明を発表し、配合率偽装で消費者の信頼を裏切ったことなどを陳謝するとともに、お詫びの表明として各社が今後数年にわたって総額10億円を拠出して、環境保全活動を行っていくことを表明した。
一方、環境省は1月30日付けで全省に通知を出し、行政などが使用するコピー用紙について、納入業者などが植林や古紙回収といった自主的な環境保全活動を行うことを条件に、グリーン購入法で定める古紙配合率を満たしていなくても「納入は可」とした。各省が紙不足に悲鳴をあげている中での緊急避難措置だ。
しかし本当にこれでいいのだろうか。まず、製紙各社がおわびとして拠出する環境保全活動への資金は、古紙配合率偽装の原因・影響究明を行うべき製紙会社の責任をなんら「オフセット」するものではない。また環境保全活動も、もし植林活動などが含まれる場合は、前述の通りの新たな問題を生みかねないことを認識すべきだ。
製紙各社は原料の確保や古紙利用に関してのユーザーや市民社会が求める情報開示を徹底するとともに、紙の持続可能性をめぐり関心を有するNGO等の市民社会との対話を開始する必要があろう。
そして環境省は、納入業者の自主申告のみで形骸化してしまったグリーン購入法の内容強化に取り組むべきだ。紙に関するグリーン購入法の基準見直しについては原案を白紙に戻しリサイクルや森林問題に取り組んできた市民グループや、NGOも加えて、じっくり議論していくことが必要であろう。
グリーン購入法の強化に求められるNGOの参加
さらに、枯渇する森林資源の現状に鑑みれば、もはや製品ごとの古紙配合率の議論では対応できないということは明らかだ。今こそ行政・産業・NGO・一般消費者が知恵を出し合い、紙の需要抑制型の社会構築に向けて取り組みを開始する時期だ。他の諸国に先駆けて日本型「低消費型社会」のモデルを構築し、世界に示すことは、大きな意義を持つに違いない。
(注:この原稿は2008年2月3日時点の情報をもとに執筆されました。)
(グローバルネット:2008年2月号より)
環境について調べる
関連リンク
- 環境goo |
- CSR |
- CSR |
- CSR in Asia
- おすすめ情報
-
- 東日本大震災 復興支援

-
今、わたしたちにできることは何だろう?
- 金環日食特集

-
5月21日!25年ぶりの金環日食
- eco検定
-
第12回eco検定申し込み登録が開始!
- 大人の社会“化”見学
-
大人の社会“化”見学 あなたの知らない企業の裏側を現場レポート!
- 生物多様性特集
-
生命溢れる美しい地球、その未来に何が待つのか、知ってください
- エコ×エネ・カフェ
-
これからの日本のエネルギーの未来を語ろう!
- 東日本大震災 復興支援
- 環境クイズ
- 環境用語集アクセスランキング
-
2012年04月のランキング 1 シェールガス 2 コージェネレーション 3 地球温暖化 4 ゴミ分別 5 京都議定書 6 絶滅危惧種 7 ハクチョウ 8 化学的酸素要求量(COD) 9 捕鯨 10 エネルギー問題 >>もっと見る

ヘルシーレシピ



