![]() 第45回 人工クラゲや擬似生物を創り出すアーティスト
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ふわっとした浮遊感覚を、 人工クラゲを通して表現したいんです。1964年大阪に生まれる。高校卒業まで奈良市で育つ。1984年、京都大学工学部資源工学科に入学、在学中は文学や演劇などに興味を抱き、小説や戯曲を書いたり、演劇を手伝ったり。卒業後大手家電メーカーに就職、人工筋肉の研究などを手がけるが、そこで出会った材料と自分が抱いていたアートイメージを融合させて「人工クラゲ」などの擬似生物の創作をスタート。水の中をふわりと浮遊する擬似生物が注目される。2001年、第26回大阪インターナショナルギフトショーにて大賞を受賞。個展として、「くねりランプ展」「想像の海展」「記憶の捏造展」「生命の捏造展」を開催。2003年には韓国でも展覧会に招待されて出品。現在、カフェとバーとギャラリーをかねる「浮遊代理店」を運営している。
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人工筋肉の研究から、人工クラゲに最適の材料を発見
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奈良駅前のカフェバーとギャラリーを兼ねた空間に、不思議な生物が展示されている。円筒形の水槽の中で、クラゲの形をして浮いたり沈んだり。けれどもこのクラゲは実は生き物ではない。生分解性プラスチックで創られた人工クラゲだ。クラゲばかりではない。タコもいれば、原始生物のような糸状の生き物もいる。ふわりふわりと水中を漂っている姿は、いつまで見ていても楽しくて飽きない。同時に、これらの擬似生物を眺めていると、生命を生命らしく見せているのはいったい何か、生命の本質までも考えさせられるのだ。 ──まるで、生きているクラゲを見ているようですね。形や動きもそっくりだし、クラゲのあの柔らかな質感まで伝わってくる。いったいなぜ、こんな人工クラゲを創作することになったんですか。 ぼく、大学は工学部に入ったんですけれど、寺山修司の天井桟敷などの演劇や文学に興味があって、自分で脚本を書いたりしていたんです。その頃は演劇を手伝っている程度だったんですが、大学を出てある家電メーカーに就職してからアンダーグランド演劇、いわゆるアングラ劇団をつくってのめりこんじゃったんですね。そのなかでも興味を持ったのが舞台美術で、なにかこれまでにない、誰も見たことがないおもしろいものが創れないか考えていました。
──なるほど、でも、実際に制作するとなると、水の中で揺れ動くような素材が必要ですよね。 そうなんです。やわらかい材料で、何か刺激を与えると自ら動くような材料がないか、探してみたんです。すると人工筋肉を研究している人がいることがわかった。筋肉って柔らかくて伸縮自在ですよね。この材料を使えば、水の中で動き回るものがつくれるんじゃないかと……。人工筋肉をつくるという場合、単に普通の筋肉の模倣をするわけでなく、刺激を与えられると自ら反応して形を変える機能性高分子の材料を使います。これはおもしろい材料だなって感じました。 ──イメージもできたし、材料の研究にも着手した。そうすると、比較的順調に人工クラゲができあがったのですか?
いえいえ、このクラゲができあがるまでは、いろいろな紆余曲折があったんですよ。まず、会社の人工筋肉の研究が中止になった。だんだん景気が悪くなって、そんな長期スパンの研究が許されなくなったんです。もっと即製品に結びつく研究をしろと。ぼくのやりたい研究が続けられそうもないので、1999年の6月に思い切って退職しちゃったんです。 ──どんなふうにして人工クラゲをつくっていったのですか。
最初は柔軟なプラスチック樹脂でつくった袋を水の中に入れてモーターを回して水流をつくり、どんな形なら水の中できれいに動くんだろうと考えてみたんですが、これがなかなかうまくいかない。それでもいろいろ水流を工夫したりするうちに、水に浮いたり沈んだり、奇妙な浮遊感覚で動くものができた。その動きが水中生物に似ていたんですね。店の水槽に展示したところ、みんなもまるでクラゲみたいだといってくれた。 ──最初、この人工クラゲを見た人はきっと驚いたことでしょうね。 GONTITIというバンドのチチ松村さんがやはりクラゲが好きで、ぼくの創った人工クラゲを見て、テレビの深夜番組で紹介してくれたんです。これがきっかけになって、まあ、よほどその日は記事がなかったんでしょうが、新聞の一面に掲載されたり、だんだん注目されるようになったんです。 ──購入したり、レンタルしたりした人からの反響はどうだったんですか。 ある歯科病院においてもらっているんですが「待っていても人工クラゲを見ていると飽きない」「ゆったりした気分になれる」って好評です。作り物だと明かさなければ、本物と間違えてしまう人もいるんですよ。最近流行の癒し系ペットだと思っている人も多いんではないですか。それに餌もいらない、世話もいらないというので、本物を飼うより楽だろうと……。でも実際は、ちゃんと水量を一定に保ってもらうなど、少しは世話をしてもらわないと浮遊しなくなるんです。
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生命の本質がみえてくるようなアートを創作したい
人工クラゲは、いまさまざまな形に進化を遂げている。クラゲからタコが生まれ、さらに水の中で動くタンポポやキノコのような擬似生物も創作された。奥田さんはこれからどんなアートを創り出そうとしているのだろうか。 ──作品を見ていると、人工クラゲのように現実の世界に存在している生物の形を示しているものと、ほんとうにこういう生物がいるかどうかわからないけれども、原始生物ならこんな形をしているだろうと想像できるような形のものがありますね。原始生物に似たヒモ状の生物は、具体的な生物というより、抽象的な生命を表しているように見えるのですが……。 ぼくが関心があるのは、「生き物はなぜ生きて見えるのか」ということなんです。それで、生き物はどんなふうにデザインされているのか、それを知りたいということもあって、実際にクラゲに似た生物をつくってみたんです。それとは別に、原始生物に似たものを作ったのは、それがぼくたち人間のような高等生物になる前の、生命の源、生命の本質的な形を見せてくれると思ったからなんです。 ──人工クラゲやタコなどの浮遊体アートをつくる場合、形をイメージするところから制作していくんですか。
ぼくはまず、言葉を探して、そこからイメージを組み立てます。たとえば、去年展覧会をやったときのテーマは「記憶の捏造」。人工クラゲが「自分はどこから発生してきたのか」を思い出すという設定なんです。その記憶の方向に2つの系統があって、ひとつは「空の星が集まって、それが垂れ下がってクラゲになった」という記憶。もうひとつが「地面からキノコのように生えてクラゲになった」という記憶なんです。 ──なるほど、これから、浮遊体アートがどんなふうに発展していくのか楽しみです。 ひとつの方向性としては、これからもっと抽象度を高めていって、現代アートの分野でもおもしろいと認められるものを創作していきたいと思っているんです。それと、人工クラゲなど擬似生物、浮遊アートのおもしろさ、楽しさをもっと多くの人に知ってほしいですね。水中をふわりと漂っている姿を見ていると、心も体も「ふわっ」とすること間違いなしですよ。 いま、絶滅種の問題をふくめて生物やいのちについて考える機会が多いけれど、奥田さんが創り出した人工クラゲ、擬似生物からは、生命のやわらかさや、こわれやすさなどが、水槽のガラスを通して伝わってくる。浮遊する「生き物」をぼんやり眺めて時間をつぶすのもよし、ちょっとむずかしく「生命とはなにか」などと考えるのもよし。奥田ワールドは刺激にみちている。 (update:2004.2.12 text:OMATA Yasuo ) |









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