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日本人は長い間、鯨を食糧資源として利用してきました。しかし、1982年にIWC(国際捕鯨委員会)で、モラトリアムが採択され、商業捕鯨は85年から90年までに資源の再評価を行ったうえ、再考するということになりました(実際には、現在に至るまで再考されていない)。日本は意義の申し立てを一度は行いましたが、87年に取り下げ、商業捕鯨から撤退、事実上の捕鯨停止に追い込まれたわけです。このときには、私を含めて多くの人は、もはや捕鯨再開ははるか彼方のことだと考えたと思います。
一方、鯨資源の包括的な評価を行うために、IWC科学委員会では、資源の分析と評価手法の見直し、個別の種の評価に着手しました。科学委員会ではこれをComprehensive
Assessment、略してCAと言っています。
鯨類の資源調査にあたっては、まず何頭生息しているか、どんな繁殖単位に分かれているのか、そして再生産率はどうなっているかを知ることが三本柱となっています。
生息数調査は事前にデザインされたコースに沿って、船からの目視調査で実施します。この目視調査はシステマテックに行う必要があり、通常は「ライン・トランセクト法」という原理を基に調査をデザインしていきます。極簡単に言うと、コースを船で走っていて、鯨をどのくらい見つけられないかを正確に出す方法なんです。コースの前の方はよく見え、鯨の数を数えられるが、脇にずれるほど見えない。どの程度数えられないかを、数理的に求められるよう調査をやっていくわけです。
目視は、捕鯨船で長いこと乗組員をしていた人、つまりモンゴル人のように茫漠とした草原で遠くのものを見分けられるような、目がよく忍耐力のある人でないと務まりません。しかも一時も目を離すことができないので、通常は6人で二時間交代のローテーションを組みますが、双眼鏡で二時間も注視し続けるのですから、たいへんな仕事です。
ライン・トランセクト法はもともと第二次世界大戦中に潜水艦の隻数を求める方法として考案され、それが野生生物の生息数を推定する方法に発展しました。このライン・トランセクト法は、鯨の生息数を推定する方法としてはたいへん優れたもので、誤差は少なく、今では鯨類関係の資源調査に広く応用されています。 |
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北太平洋鯨類目視調査の調査航跡、1983-1995(遠洋水産研究所による) |
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鯨類目視調査船の観察ブース。
(財)日本鯨類研究所提供 |

鯨類目視調査船。昭南丸(712新GT)。中央マストに観察ブースなどがある。撮影:加藤秀弘 |
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さて、IWCの科学委員会ではCAに加えて、商業捕鯨モラトリアム決議の要因となった管理方式の不確実性を解消するための、多国間の研究グループが15年がかりで、「改定管理方式」という鯨類の資源管理の基本的な管理モデルを開発し、科学委員会は全メンバーによって、これを合意しました。この方式のすぐれたところは、(1)あらゆる可能性を排除せず、鯨類保護一辺倒でも、捕獲一辺倒でもないこと、(2)鯨の資源を損なわないように捕獲することが大切だという認識をもっていること、(3)情報の精度によって、捕獲できる量、保護する量を決定することの3つです。
改定管理方式の開発によって、現在科学委員会においては、極端に数の減ったシロナガスクジラなどの希少鯨類をのぞき、ミンククジラなど健全な鯨類資源については、持続的な管理を行っていけば捕鯨しても支障はないという結論に達し、運用テストのステージに入っています。ただ、科学的には解決がついたものの、政治的、社会的な問題としての解決はまだ積み残されたままです。科学ではなく、国際間の政治や文化の領域に属するだけに難しい問題もありますが、モラトリアムが実施された当時は商業捕鯨の行方は全く見通しが立たなかったわけですが、現在、この改訂管理方式を用いての捕鯨再開の可能性は以前に比べずいぶん高くなっているといえます。
また、国際捕鯨取締条約第八条に基づいて、(財)日本鯨類研究所が主体となって実施している鯨類捕獲調査(いわゆる調査捕鯨)は、鯨類資源管理の強化や生態系の問題の解決を目標に行われているものです。 |
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IWC科学委員会が算出した生息数
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生息数 |
95%信頼区間 |
| ミンククジラ |
| 南半球全域(60度以南) |
761,000 |
510,000〜1,140,000 |
| 北大西洋 |
149,000 |
120,000〜182,000 |
| 北西北太平洋−オホーツク海 |
25,000 |
12,800〜48,600 |
| ナガスクジラ |
| 北大西洋 |
47,300 |
27,700〜82,000 |
| コククジラ |
| 東太平洋 |
26,300 |
21,900〜32,400 |
| ホッキョククジラ |
| ベーリング海ーチュクチ海 |
8,000 |
6,400〜9,200 |
| ザトウクジラ |
| 西部北大西洋 |
11,570 |
10,580〜12,650 |
| 南半球(60度以南) |
10,000 |
5,900〜16,800 |
| シロナガスクジラ(通常型) |
| 南半球 |
400〜1400 |
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| コビレゴンドウ |
| 中央ー西部北大西洋 |
780,000 |
440,000〜1,370,000 |
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遠洋水産研究所が分析した西部太平洋域の鯨類生息数
(IWCをのぞく)
| 種類 |
生息数 |
変動係数 |
| スジイルカ |
568,000 |
0.1〜0.9 |
| イシイルカ |
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| (イシ型) |
226,000 |
0.1 |
| (リクゼン型) |
217,000 |
0.2 |
| コビレゴンドウ |
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| (マゴンドウ) |
51,000 |
0.2 |
| (タッパナガ) |
5,300 |
0.4 |
| ハナゴンドウ |
93,000 |
0.1〜0.3 |
| ハンドウイルカ |
156,000 |
0.2〜0.3 |
| マダライルカ |
438,000 |
0.1 |
| カマイルカ |
1,000,000 |
0.7〜1.6 |
| セミイルカ |
305,000 |
0.78〜1.34 |
| シャチ |
1,586 |
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Miyashita(1993)ほかより
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