
|
| |
東アジアからの越境大気汚染を観測・研究し、 酸性雨被害の予測や対策に役立てる |
 |
国立環境研究所 大気圏環境研究領域 大気反応研究室
畠山史郎氏
|
|

|

|
私は国立環境研究所の大気反応研究室で、次の4つのテーマを中心に研究活動を行っています。
1/大陸などからの「越境大気汚染」の測定、研究
2/発展途上国に対する環境技術援助
3/大都市周辺の森林衰退に対する大気汚染の影響の研究
4/光化学スモッグなど大気中の化学反応の研究
大気汚染による酸性雨などは、植物や動物、人間に大きな影響を与えます。最近ではことに経済成長が著しい中国など、アジア諸国の大気汚染が問題となっていますが、これらの国々の大気汚染は、発生源の国はもちろん、気流の関係でわが国にも直接影響を与えます。大都市や途上国での大気汚染がどんな経路で周囲に影響を与えるのか、またそれを防ぐためにどんな技術が求められているのか。4つのアプローチでの研究を通じて、大気汚染や酸性雨被害の軽減に役立てたいと考えています。
|

|

|
酸性雨というと、レモンのような酸っぱい雨が降ることが問題だと思っている方が多いでしょう。
しかし、いちばんの問題は、工場や自動車の排気ガスなど、私たち人間の経済活動を通じて、二酸化硫黄や窒素酸化物等の酸性物質のもとになる物質が空気中に大量に放出され、空気そのものが酸性になってしまうことなのです。
化石燃料を燃やして発生した排気ガスには、二酸化硫黄や窒素酸化物が含まれています。
二酸化硫黄は大気中で酸化されて硫酸に、窒素酸化物は硝酸に変化します。
雨が酸性になるのは、空気中の酸性物質が溶け込むためで、大気の酸性化のひとつの現象にすぎません。
|

|

|
酸性雨は地球温暖化、オゾン層の減少などとともに、地球規模の環境問題として考えられています。
しかし、その広がりからみて、温暖化現象などより多少スケールが小さく、北アメリカ大陸、ヨーロッパ大陸、アジア大陸など、大陸規模の環境問題といえます。
化石燃料の大量燃焼による酸性雨が早くから観測されたスウェーデン南西部では、広大な森林が枯死したり、多くの湖で魚が死ぬなどの影響が出ました。その後、ヨーロッパやカナダ南東部、アメリカ北東部などでも森林地帯に被害が出て、酸性雨対策の必要性が世界的レベルで提唱されました。
欧米などでは対策が進み、現在もっとも酸性雨問題が深刻な地域のひとつが、中国を中心とする東アジア地域といえます。
|

|

|
東アジア地区の大気汚染問題を考える前に、まず日本の現状をお話しましょう。
最近大都市周辺の山岳地域で大規模な森林被害が見られます。たとえば、関東北部の日光の山々では、ダケカンバ、ミヤマハンノキ、シャクナゲなどの広葉樹、オオシラビソ、コメツガなどの針葉樹など、さまざまな種類の樹木が枯れています。これほどの種類が枯れたことから、世代交代や樹種の交代とは考えにくく、また被害が進む一方のため、自然現象による一時的なものでもなさそうです。
日光の樹木被害は主に、東京・首都圏に面した南東の斜面に集中しています。首都圏で放出される大量の大気汚染物質が、樹木の枯死に関係していることは十分に考えられます。
樹木の枯死と密接な関係をもっているのが、光化学オキシダントです。オキシダントの主成分であるオゾンは、米国の全国酸性降下物評価プログラム(NAPAP)でも森林被害の第一原因としてあげられています。私たちは日光連山の前白根の頂上、標高2200m付近でオゾン濃度を測定しました。夏には100ppb(ppbはppmの千分の一)を超える高濃度のオゾンを検出したことがあります。日光の山に限らず、秩父など関東平野をとりまく山々ではどこでも、樹木の枯死現象を見ることができます。
|
日光 前白根山頂上直下の鞍部で観測された高濃度オゾン
|
|
関連リンク
|