第105回 日本のマテリアリティは、雇用・従業員・家庭・機会の安全
IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 代表者 川北 秀人
嵐の2009年が幕を明けた。来るとわかっている嵐を、耐えて通り過ぎるのを待つのではなく、過ぎた後を見据えた備えをどれだけ進められるかが、経営者や指導者に問われる真価だ。
改めて言うまでもないが、CSRには「守り」と「攻め」の2種類がある。攻める力が出せないときは、守りをしっかり固めることが、備えの基本原則だ。コンプライアンス(法令の遵守や顧客の期待への適応)はもちろん、エネルギーや原材料のさらなる有効活用や、働く人々の人権の遵守・尊重は、守りのCSRの基礎であり、こんなときこそやりきれるかどうかが、経営者と現場の双方に試されている。
昨年末に、第9回を迎えた「環境・社会報告書読者アンケート」の調査結果を報告するシンポジウムが、史上最多の来場者でにぎわうエコプロダクツ展の会場・東京ビッグサイトで開催された。
世界初で、しかも9年も連続して実施されている世界唯一の「環境・社会報告書の読者の調査」に、今年は4万6千人もの方々がご協力くださった。30分は要する設問に丁寧に解答してくださった方々に、心からお礼を申し上げるとともに、その熱意にお応えするために、その分析結果を数回にわたってご紹介したい。
「公開すべき」社会的項目は、
雇用・従業員・家庭・機会の安全
「関心の高い環境問題」を3つまで選んでもらう設問では、今年も「地球温暖化」が7割を超え、圧倒的な関心の高さが確立したといえる。
一方、環境問題以外の社会的な項目として、「サステナビリティ・レポートによる公開が必要だと思う情報項目」についても、複数回答では8割以上が、5つまでを選ぶ制限回答でも5割以上が、今年も「雇用・正当な労働に関する情報」を挙げている。
以下、複数回答の上位は、「従業員の健康・安全」(70.3%)、「仕事と家庭の両立」(62.3%)、「雇用の多様性と機会」(58.1%)と続き、「顧客の健康・安全の保護」(57.6%)を上回っている。つまり「働く人々の安全」に関する情報こそが、日本人が環境・社会報告書での開示を求めるマテリアリティ(実質的な重要性)であることを、レポート制作上はもちろん、日常的な取り組みを進める上でも、しっかり念頭に置く必要がある。

20代・30代の男性が、
最も大きな変化
さらに、「雇用・正当な労働」と「仕事と家庭の両立」の2つの項目について、性別・年齢層別に、2006年の調査結果と比較したところ、既婚の20代・30代の男性の意識が大きく変化したことがわかった。「雇用・正当な労働」については5%弱増加して5割を超え、「仕事と家庭の両立」については、20代で10%弱、30代でも4%弱増加して、ともに3割前後に達している。 「仕事と家庭の両立」については、まだ同年齢層の女性の回答には及ばないものの、関心の高まりは顕著であり、「雇用・正当な労働」については、女性と同じ水準にまで達している。
この調査は例年10月から11月にかけて実施されており、昨年はいわゆる「派遣切り」が深刻化する前に行われているため、働く人々の安全に対する関心は、その後さらに高まっていると言える。
働く人々の安全をどう守ったか・守れなかったかという「結果」と、それはなぜかという「根拠」の2つの説明責任を果たすことが、今年発行されるレポートの最大の注目点となるだろう。たとえ自分たちにとって都合の悪い情報でも、事実を正確に開示することが、レポート(報告)や対話の基本原則だ。決して逃げずに、誠実な開示を心がけてほしい。
(update:2009.1.15)
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