第125回 社会貢献活動から「社会観」と「戦略力」が見える
IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 代表者 川北 秀人
社会貢献活動は、企業の社会における責任(CSR)のごく一部であり、利益が出なければ行われないことさえある。だからこそ、各社の社会貢献活動を見ると、その会社の「社会観」と「戦略力」が、くっきりと見えてくる。
選んだテーマと手法が、「社会観」をあらわす
社会の一員としての責任と役割が市民から期待される今、環境負荷削減への取り組みも、従業員の働き続けやすさの向上も、社会貢献活動も、費用・配分ではなく投資であり、「いくら費やしたか」ではなく、「どんな成果を社会にもたらしたか」が問われている。
すでに多くの方がそのことをお話ししていらっしゃり、重ねて申しあげるまでもないが、改めて確認したい方は、筆者が日本経団連の社会貢献委員会で昨年12月に「社会的課題の中期展望と課題解決に果たすべき企業の役割」についてお話しする機会をいただいた際の資料を、ご参照いただきたい。
すると、各社が「どんなテーマに、どんな手法で投資しているのか」が、その会社が社会のこれまでとこれからの推移をどう把握し、自社と社会との接点から、重要な課題(や理想)として何を選び、その解決(や実現)にどう臨もうとしているのか、という「社会観」を顕著に示すことがおわかりいただけるだろう。
あなたは他社や自社のCSRレポートの社会貢献活動を紹介するページを読んだとき、「この会社がなんで、こんな活動をしてるの?」とか、「他に優先して取り組むべきことや、よりよい手法があるんじゃないの?」と感じたことはないだろうか。つまり、社会貢献活動を紹介するページこそ、「どんな活動をどれだけ行ったか」を羅列する前に、「社会の多様な課題(や理想)の中から、どのテーマが、なぜ自社にとって重要なのか」を示すとともに、それを解決(実現)するために、最も効果的な手法として選びとった活動の結果として「どのような成果がもたらされた(もたらされようとしつつある)か」を示す必要がある。
「創業者の代から続けてきたから」とか、「他社もやっていて、自社でも始めやすかったから」といった理由しかない社会貢献活動には、率直に言えば「あぁ、この会社って、社会貢献を『この程度のことで済まされる』と思ってるんだ」という評価しか得られない。
視野と体制が、「戦略力」をあらわす
せっかく限られた予算や時間を投じて実践するなら、「大切なテーマで、よい成果を挙げてますね」と評価されるものに絞り込んでほしい。絞り込むことで、成果の最大化や手法の最適化を中長期的に促す戦略づくりを進めていく。
あなたの会社の社会貢献活動には、中長期的な基本計画があるだろうか? その視野は、何年ぐらいで、地域や対象はどれぐらいの範囲だろうか? 自社の事業の特性や規模に応じて、事業所の周辺地域から世界までを範囲として、せめて5年、できれば10年の時間軸で、社会の変化を織り込んだ上で、自社が取り組むべき課題を選べるよう、視野をしっかり広く深く持ってほしい。そのためには、自社内の担当者だけでなく、他社の社会貢献担当者や、NPOなどにも継続的に参加・助言してもらいながら、視野を拡げていく必要がある。
また、取り組みそのものも、寄付・助成であれ、従業員によるボランティアであれ、現状に対処・対応する活動への配分だけでなく、5年後・10年後によりよい社会が実現するよう投資できるプログラムや体制づくりが求められている。もちろん、企業には、社会貢献の専門家を育成する義務はない。だからこそ、NPOや専門家の力を借りた体制づくりが不可欠だ。
つまり、NPOを「支援する対象」と見て資金を配分するのではなく、自社が取り組むと決めた社会的な課題(や理想)を解消(実現)するパートナーと位置付け、中長期的に協働する体制を組んでいるかどうかが、その会社の戦略力を顕著に示すことも、おわかりいただけるだろう。
「市民団体を支援する」のではなく、「NPOと一緒に社会的な課題の解決に挑む」
このように、社会性と戦略力の違いは、私たちNPOを、自社にとってどういう存在だと位置付けているかに、端的に表れる。
「環境」や「子ども」といった抽象的なテーマを設けて活動助成の予算を取り、外部の選考委員によって選ばれた団体に資金を配分して報告を待っているのか、それとも、中長期的に取り組むべき課題(や理想)を一緒に考えて、協働して取り組む中長期計画をつくり、自社の製品・サービスや従業員のボランティアなどと結び付けて、解決(実現)に向けてともに力を尽くすのか。
あなたの会社は、株主への配当や従業員への賞与となるべき資金を敢えて「社会貢献活動の予算」とする際に、どちらの組み立てを選ぶのだろうか。
(update:2010.9.30)
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