第126回 トピック・手法・業務の前に、見通しと目標と戦略を
IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 代表者 川北 秀人
2010年もあとわずか。今年は、区切りのいい年ということもあって、「今後5年間・10年間のCSR中長期戦略を考えるヒントや切り口を教えてほしい」というお問い合わせを、たくさんいただいた。
一方で、CSRを担当する部署が発足して何年かが経過して、すっかり加速感を失ってしまっている会社も多くみられる。「方針や体制は従来通りで、次に取り組むべき課題もわかっているが、現場の巻き込みが不十分なので、様子を見ながら」といった各社のご担当者の発言からは、本来ならボトムアップで進めるべきCSRへの取り組みの第2段階が、完全に停滞してしまっている様子がうかがえる。
確かに、次に取り組むべき課題、というより、対応していないと取り残されてしまうトピックや手法、CSR委員会などの会合開催や報告書発行などの定常業務も、もちろん大切だ。しかし、取り組みが停滞している会社に足りないのは、見通しと目標と戦略だ。
「従来の延長線上」などあり得ないから、見通しをつくる
1989年に昭和が終わり、2000年に20世紀が終わり、今年・2010年には「Japan as No.2」(世界第2位の経済大国)も終わった。なのにまだ、昭和や20世紀につくった組織や文化・価値観のもとで、消極的・受動的に対応すればやり過ごせるなどと、思っていないだろうか?
世界を市場とする企業は、すでに何年も前から気付いているように、私たちはもはや、追われる立場ではなく、追う立場に回っている。しかも、1970年代の市場の世界拡大(第1次グローバル化)期や90年代の資産の世界拡大(第2次グローバル化)期には、他国との比較で言えば、勢い(=成長率)は明らかに私たちにあった。
ところが、今回は違う。組織の世界拡大(第3次グローバル化)が求められる今、新興国は5%を優に超える成長率を維持しているのに、私たちは世界有数の金融資産を持ちながら、判断が遅く、しかも追いつめられた状態で小手先の対応しか決められない市民・企業・政府のおかげで、潜在成長率は1%にも満たない。そんな「決められない」人たちのペースに合わせ続けることと、自社の持続可能性を守り高めるために、良く決めるための見通しを持つことと、どちらが大切かは、もちろんおわかりだろう。
現在の社会的な課題は、5年後の市場の基本常識
社会的な課題は、企業や市民にとって、気にはなっても、気の毒に感じても、法律、つまり義務ではないから仕方がない、という会社や人もいるだろう。しかし、法令で義務化される前から動くことは、その投資に見合う効果が短期的には得られなくても、その先取性や責任感の高さを評価される。特に大切なのは、社外の評価より、「ウチの会社、次はこういうことにチャレンジした方がいいんじゃないか?」と言い出し、動き出してくれる従業員が増えること、つまり社内の評価だ。「ヨソは動き出してるみたいだけど、上から言われてるわけでもないから、まぁいいか。」で終わってしまう会社との違いは、商品の開発や顧客への姿勢など、現場のあらゆる面で積み重なっていく。
そしてあるとき、欧州や途上国がルールをつくる。そのとき、社会的な課題は、法的な条件となる。それを待つのか、それとも先取りするのか。目先の自社の利益しか見えないのか、中期的な持続可能性を社会とともに共有するのか。その評価は海外で、今後ますます厳しくなることを覚悟しておいてほしい。
5年後・10年後に向けて、どう組織・価値観を変革できるか?
組織や文化・価値観を1日や1年で変えることなどできないことは、筆者も十分に理解している。では、5年ではどうだろう?
5年後、あなたの会社の売上と顧客は、現在とどう変わっているだろうか? そのために、会社は開発・生産(供給)・販売・メンテナンスの体制を、どう変えていなければならないだろうか? そのさらに5年後の10年後は、どうだろうか?
現在の経営層に聞くと、「そんな先のことなんて、考えられないよ」と、笑いながら答えられることが多い。もちろん半分は謙遜だろうが、しかし、それが謙遜でなかったとしたら、本当に困る。
だから50歳代の上級管理職の方たちには、「あなたが異動する際に、後任者にどんな基盤と流れを引き継いでおけばよいかを考えてますか? どんなことを実践していますか?」とたずねている。
10年後の2020年、このままいけば、日本のGDPは中国の半分にしかならない。その時に備えて、自社が事業をどう変えねばならないのか、そのために、組織と価値観をどう変えていくのか。CSR担当部署には、その目標と計画を示す義務がある。
(update:2010.11.4)
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