第130回 主婦に信頼されるには、「働き続けやすさと安全」を身近で伝える
IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 代表者 川北 秀人
「ステークホルダー別」から「求められる深さ別」へ、コミュニケーションの基本方針を改めるべきだと前稿で申し上げたところ、何人もの方々から、「頭の中がスッキリしました!」というコメントをいただいた。
では、「わかりやすさ」への工夫が最も求められる層は、現在のコミュニケーションをどう評価しているだろうか。そのひとつの典型例として、CSRレポートに対する主婦の評価を見てみよう。
環境gooが2000年から毎年続けて行っている「環境・社会報告書読者調査」では、昨年秋に実施した11回目の調査の分析の切り口のひとつとして、主婦からの回答と、他の属性からの回答との対比を行った。この分析結果を発表した昨年末のシンポジウムでは、「『主婦』という対象の設定が不適切」といったコメントもいただいたが、しかし、成人で、有力な消費者であり、専ら仕事しているわけではない、という属性の人たちは、専ら仕事している人たちとの対照群として重要な存在であり、その観点から敢えてご紹介していることを、繰り返し言明しておきたい。
「わかりにくい」「信頼できない」のは、「企業側が、出しやすいデータを詳しく出しているだけ」だから
現在の報告書の問題点をたずねる設問(複数回答)では、全体では「内容・書式が異なり比較できない」「数値を評価できない」「良いことばかり書かれて客観的でない」「専門用語が多い」が上位を占める。専業主婦の回答で最も多かったのは「専門用語が多い」で46.6%と、環境関連の職に就く人(以下、環境関連職)の30.5%に比べて16%も多い。 同様に、「信頼性のある報告書の条件」への回答(3つまで)は、「自社にとってネガティブな情報の記載」を挙げる専業主婦は63.6%と、環境関連職より10%近く多い。
少々強引なのを承知の上で、この2つの属性の回答の違いを要約するなら、「主婦にとって『わかりにくい・信頼できない』のは、環境関連職がレポートに掲出している情報が、企業側にとって出しやすいデータを、詳しく出しているだけだから」と言えるだろう。
もちろん、本調査を初めて行った2000年ごろに比べれば、CSRレポートに掲出される情報は、項目の網羅性においても、内容・表現の詳細さにおいても、格段に進んでいる。しかし、それが「広く一般の市民にも読みやすく」と言われる際に想定される代表的な属性ともいえる専業主婦にとって、わかりやすいといえる水準にあるかと言えば、そうではないと評価されていることは、謙虚に受け止めていただきたい。
主婦の信頼を高めるなら、「働き続けやすさ」と「安全」を「マスメディア」と「商品」にも開示する
「信頼性のある報告書の条件」として、環境関連職と専業主婦の回答の間に、ギャップが見られたのは、「読者にとって重要・必要な情報がある」という項目で、環境関係職が21.6%しか挙げていないのに対し、専業主婦では40.5%にも達している。
では、専業主婦にとって、関心の高い項目は何か。「サステナビリティ・レポートで開示すべき項目」を10項目までをたずねる設問では、「雇用・正当な労働」が53.7%(環境関連職では43.6%)、「仕事と家庭の両立」が30.3%(同17.0%)と、従業員の働き続けやすさに関する項目について、環境関連職より10%以上高くなっている。また、「社会的責任を果たすために特に重要な経営課題」を5項目までたずねる設問では、「製品・サービスの安全・安心」(専業主婦39.8%、環境関連職21.8%)、「温暖化防止、省エネ」(同37.4%、21.6%)、「仕事と家庭の両立」(同29.0%、14.5%)で、同様に大きな差がみられる。
その取り組みを伝える手段として、「企業の環境活動を知るために効果的な方法」についてたずねる設問への専業主婦の回答は、上位から順に「マスメディアを使った環境商品の広告」(専業主婦49.6%、環境関連職32.0%)、「マスメディアを使った環境に関する企業PR」(同43.5%、30.3%)、「地域での社会貢献活動」(同41.9%、31.2%)、「自社ホームページでの情報発信」(同40.4%、45.1%)、「一般向け工場見学会の実施」(同37.6%、25.9%)、「商品のパッケージやラベルへの情報の記載」(同36.3%、18.0%)と、こちらも環境関係職の回答と大きく離れている。
本稿で何度も述べてきたように、日本のマテリアリティは、働き続けやすさに関する情報であり、「一般市民」の代表的な属性である専業主婦は、企業の取り組みを知るためのチャネルとして、マスメディアや商品の表示、そして地域での社会貢献や工場見学など、自分の身近に届きやすいものを求めている。
前稿の繰り返しになるが、すべての対象にわかりやすくするなどという、コミュニケーション上の課題の抽象化や逃避をやめ、対象を明確にすることで、相手の期待や不安・不満を正確に知り、それに応えることこそ、信頼を高める基礎となるという当たり前の取り組みを、着実に進めてほしい。
(update:2011.3.10)
関連リンク
- 環境goo |
- CSR |
- CSR |
- 環境・社会コミュニケーションの考え方・進め方
- おすすめ情報
-
- 東日本大震災 復興支援

-
今、わたしたちにできることは何だろう?
- 金環日食特集

-
5月21日!25年ぶりの金環日食
- eco検定
-
第12回eco検定申し込み登録が開始!
- 大人の社会“化”見学
-
大人の社会“化”見学 あなたの知らない企業の裏側を現場レポート!
- 生物多様性特集
-
生命溢れる美しい地球、その未来に何が待つのか、知ってください
- エコ×エネ・カフェ
-
これからの日本のエネルギーの未来を語ろう!
- 東日本大震災 復興支援
- 環境クイズ
- 環境用語集アクセスランキング
-
2012年04月のランキング 1 シェールガス 2 コージェネレーション 3 地球温暖化 4 ゴミ分別 5 京都議定書 6 絶滅危惧種 7 ハクチョウ 8 化学的酸素要求量(COD) 9 捕鯨 10 エネルギー問題 >>もっと見る





ヘルシーレシピ



