第131回 東北・関東大震災から学び備えるべきこと
IIHOE [人と組織と地球のための国際研究所] 代表者 川北 秀人
東北・関東大震災の被害に遭われたみなさま、また、ご家族やご関係のみなさまには、心からお見舞い申し上げます。また、発災直後から救援や復旧のためにご尽力いただいているみなさまには、心から敬意を表します。私たちも微力を尽くして、被災された方たちを支え続けることを、ここに重ねてお約束申し上げたい。
前回から数回にわたって、環境・社会報告書読者調査に基づく分析をお伝えする、と申し上げたが、今回は、このたびの大災害から学び備えるべきことについてお伝えしたく、予定を変更することをお許しいただきたい。
「想定外」対応に問われるスピード、品質、予測
今回の大災害への各社の対応を伺っていると、その差を生んでいるのは、「想定外」の事態に立ち向かうスピードと品質と予測の力が、備わっていたかどうかの差だと痛感する。
今回の災害の規模が想定を超えるものだったことに、異議をはさむ人はいない。それが「1000年に一度」という確率で起きることがわかっていたとしても、それに備えられていなかったことを今さら責めても、仕方がない。
問題は、目の前で想定外の事態が起きているときに、判断や行動のスピードや品質をどう維持し、高めることができるか、そして、次にどのような事態が起こりうるのかを、仮説と推計をもとに予測することができるか、にある。
対応の遅れや進め方に問題を指摘されている企業や政府機関に共通するのは、日常業務においても、判断や行動を進める手続きが、文書を必須とするように形式主義的だったり、しくみそのものが非効率的かつ複雑だったりすることだ。
そういった企業や政府機関の災害対策マニュアルや業務復旧・継続計画(BCP)をみると、日常的な機能がほとんど損なわれないことを想定しており、「それでは甘い」と筆者が指摘しても、「自分たちにはこれが精一杯」「これでなければ、全組織が対応できない」といった反応しかなかった。
しかし、そんな組織の都合をたやすく踏み潰してしまうのが、大規模災害だ。施設も通信環境も職員も被災し、常時の対応ができないから、非常時への備えと訓練が必要になる。
スピードと品質の維持と向上を可能にするのは、明確な価値観と、互いに確認しあう習慣だ。「安全の最優先」や「目の前の被災者(顧客・市民)に最短で最善を尽くす」といった明確な価値観こそ、現場のスタッフの基本的な判断基準となる。また、どんな作業や業務、情報伝達の際も、お互いが意識的に確認し合うことで、状況の共有と相互の支援が可能になる。
そんなわかりきったことができないほど、追い詰められた状況にあることはわかっている。しかし、非常時だからこそ、全員が全力を振り絞らねばならないからこそ、基本に忠実であることが大切だ。
このとき、リーダーが心がけなければならないのは、現場の状況の正確な把握を待つのではなく、次にどのような事態が起こりうるのかを、仮説と推計を基に予測することだ。現場の事態の変化は早く、その対応に追われる状況であったとしても、その事態の規模が大きければ大きいほど、範囲は大きく、期間も長くなることを覚悟したうえで、次の手、その次の手を用意しておかなければならない。その想像力・構想力は、非常時だけでなく、技術の革新や、異なる文化圏へのアプローチにも共通して求められる。
NPOとの長期的な連携を!
私たちNPOも、被災した地域で以前から活動していた団体はもとより、燃料や水・食料が乏しく、交通インフラが寸断されている中で、文字通り全国各地から、さまざまな団体が支援活動を続けている。
発災から2週間を経ても、燃料不足のために、水・食料や防寒具、医薬品・衣類など、最小限の物資さえ十分に届いていない避難所が多く、厳しい寒さの中で生命を維持するのにギリギリの環境を支えるための活動が中心だ。
しかし今後、3月末ごろには物資供給がほぼ安定し、4月下旬にかけて仮設住宅への入居が本格化する。そのときまでに、くらしを支える体制を整えておく必要がある。
津波と原発事故の被災者が本当にお気の毒なのは、財産や家族を失われただけでなく、戻るべき家も、仕事も、すべて失われたことであり、その数は実に数万世帯に及ぶ。そんな方々の支援を、行政だけで行うのは不可能であり、子ども、高齢者、障碍者をはじめとした、さまざまなニーズを持つ人々のために活動する団体との連携が不可欠だ。
企業のみなさまには、ぜひ、被災地でのくらしの回復や復興に取り組む市民を支え続けるために、市民のくらしを現場で支えるNPOとの長期的な連携を、ぜひお願いしたい。
再生可能エネルギー導入の徹底的な前倒しを!
もうひとつは、再生可能エネルギー導入の徹底的な前倒しだ。首都圏や東北地方の夏の電力不足は、これまでの節約型の対応では、とても乗り越えられない。業務機能や生産拠点を中部圏以西にシフトする動きも加速的に進んでいるようだが、それにも限界がある。中長期的な観点から、太陽光、風力や小規模水力、さらには地下熱など、再生可能エネルギーの利用拡大を進める好機ととらえて、徹底的に前倒しし、真のグリーンニューディールの機会としてほしい。
不幸にも犠牲になられた方々の無念にこたえるため、私たちにできるせめてもの努力は、安全の回復と、持続可能性を高める復興に他ならない。想像を絶する試練を、従来の延長線上を乗り越える機会としよう。
(update:2011.3.31)
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