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第一部どう評価する? 容器リサイクル法

佐野さん lecture2
リード

佐野 敦彦
(株)佐野環境都市計画事務所
代表取締役

プロフィール
1954年生まれ。横浜国立大学工学部卒。専攻は都市計画。(株)東芝原子力事業本部、(財)クリーンジャパンセンターを経て、1989年に、環境問題専門のコンサルタント事務所として(株)佐野環境都市計画事務所を設立。(現在スタッフ12名)
廃棄物管理問題を中心に、環境政策全般に関する調査研究やコンサルティングを行っている。また、環境NPOとも連携した活動を展開。日本リサイクル協会事務局長、(財)都市経済研究所常任参与他を兼務。1級建築士。 本年4月に出版した「拡大する企業の環境責任」(環境新聞社)は、EPR(拡大型生産者環境責任)を軸に、欧米の事例を踏まえながら、日本の容器包装リサイクル法や家電リサイクル法を評価、 今後の循環型社会形成に向けての企業や行政の役割を展望した好著。
発言要旨
 容器包装リサイクル法は、リサイクルを進める社会的な仕組み作りのスターターの役割は果たしたといえる。第2ステップは、現状をあらゆる角度から検証し、費用対効果を見極めるべきだ。その際、政策目標と手段との関係を明確にするべきである。 とりわけ、直接排出者に負担を求めるか、税による間接負担か、価格への内部化を進めていくか、という処理費用の徴収手法を〈直間内比率〉のあり方として論じていく必要があるだろう。

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───先生は、容リ法制定時に、現状の微調整のシステムではうまくいくはずがないと、猛反対されていましたが。
 いいえ、そういうわけではありません。ドイツが、製造事業者などに汚染回避を最優先する政策目標に対して、処理費用を内部化するという手段により徹底させたのに対して、日本の容リ法は、 使用済み容器包装材の再資源化を円滑にするために、既存の社会システムの延長線上に自治体と事業者の間でリサイクルの役割分担を決めたものです。企業に使用済み製品に対する責任をどこまで求めるか、消費者からの処理費用の徴収手法をどうするか、 行政の関与の是非を含め「環境と経済の調和」を社会システムに組み込むためのビジョンが必要であることを問題提起していました。
───いまの容リ法は〈限りある資源を有効に使うために〉リサイクルしていこうというビジョンを持った法律ではないってことですか?
 将来に対する理念として、省資源・省エネルギー、持続可能な社会を視野に置いていることはたしかですが、〈廃棄物の減量化、減容化〉の一手段としてリサイクルを位置づけたものと認識したほうがいいと思います。
───減量化どころか、先行して実施されたペットボトルが野積みになっているとよく問題になっています。
 ペットボトルが増えた要因は3つあります。第一に、自治体が分別回収というペットボトルのリサイクルの上で、いちばんコストのかかる部分を分担したことで、社会的コストの一部が価格から外部化されたために、 ぺットボトル入りの飲料を売りやすくなったというのはひとつの要因だと思います。すなわち、企業は再商品化費用を価格へ内部化すればいいということで売りやすくなった。 第二は、キャップ部分の特許が切れた時期とタイミングがあって多くの製造業がペットボトルの製造、販売をしやすくなったこと。第三に、ここ数年の販売チャネルの変化がペットボトル入り飲料に追い風となったこと。 つまり、コンビニに対するマーケティングとしてペットボトルが最適だったことをあげることができると思います。容リ法が原因となっているのは一番目の点です。
 ご質問のぺットボトルが野積みされるという問題は、関係者にとっては大変な問題です。しかし、中期的には解決可能であり、その解決方法が既に法体系に組み込まれているので将来の仕組みの議論に影響を及ぼすような問題とは思えません。 ただし、分別収集計画と再商品化計画を調整するという政策スキームの是非を議論する必要はあると思います。
───企業の負担が軽すぎるという指摘をよく耳にしますが。
 多くの人がそういう言い方をしますが、缶、びん、ペットボトルだけを収集の対象にして再商品化するという意味ではその通りです。でも、紙容器やプラスチック包装の全体を考えたときは、必ずしもそうならない。 自治体の分別収集コストと特定事業者の再商品化コスト負担がかなり拮抗してきますので、自治体側の負担だけが多くて、事業者側の負担が軽い(価格への内部化割合が少ない)というのは一面的な見方ではないでしょうか。
 もっとも分別収集を自治体が担当したことで、一部自治体では、効率が悪く、コスト高になっていることは事実です。また、特定事業者の価格内部化した再商品化費用額が少ないために、 特定事業者の排出抑制のためのインセンティブになっていないという指摘は重要な視点だと思います。
 それから、ぜひ確認しておきたいのですが、処理費用の負担は企業がしているわけではなく、基本的に消費者が何らかの形で支払っているものです。だから、その徴収手法として、再商品化費用を価格内部化して、企業が負担していると表現したほうがいいと思います。
───ゴミを減らすというなら、ペットをやめてリターナブルびんにするのが一番手っ取り早いように思いますが。
 さあ、そこです。例えば、二酸化炭素の発生量から見たLCAの分析では、牛乳の場合でリターナブルびんと紙パックを比べてみると、リターナブルびんのほうが環境負荷が低いと言えるのは、せいぜいが100〜150キロメートル圏内での運搬に限られます。それ以上の ときは、かえってリターナブルびんのほうが環境負荷が高い場合もあります。ですから、条件によっては、必ずしもリターナブル容器を選択することがベストとはいえません。ただし、ゴミの減量化に大きなウェイトを置くなら答えは変わる可能性があります。
 主婦感覚でいうと、日常生活で環境に汚染を与えるのは3つ。水を汚染するか、エネルギーを使うか───これは大気汚染につながります、あるいはゴミとして出すか。液体か気体か固体か。この3つの要素のうち、どれに重点を置くか、認識の違いによって、 政策が変わってくる。いまはまだ石油が安い。大気汚染もひと段落ついたし、ディーゼルの排気など多少問題はあるけれど、総じてエネルギーを軽く見ている。水はまだ量の不足問題が顕在化していない。いまの社会は、ゴミが大問題。 何を重視するかをきちんと議論して、共通の認識を持ったうえで政策を進めることが大切だと思います。 そのさい環境負荷を総合的に評価するLCAは重要な指標になりますが、前提がバラバラだったり、LCAですべてを結論づけることには限界があることも認識するべきです。
───先生は消費者団体にアドバイスしたり、企業、自治体のコンサルティングをされていますが、3者のギャップはどこにあるのでしょう?
 企業は経済原則を中心に考える。これは企業の宿命だから仕方がない。自治体は公平性を重視するあまり、経済原則を無視しすぎている。そして、消費者は経済原則を自分のサイフからしか見ない。このギャップがすべての原因で、ここがきちんと調整できてない。 三すくみの状況です。市場を通じて調整する部分とそうでない部分を明確にすることが今後の仕組みづくりの大きな課題だと思います。
───ズバリ、容リ法の現状の評価は?
 リサイクルの仕組みをつくるスターターとしてはそれなりに評価できると思います。ペットボトルのリサイクルの体制が遅まきながら動き出したし、プラスチックも紙容器も、今後なんらかの仕組みができるでしょう。 とりあえず、容リ法が動機付けの役割を果たした、これはプラスの側面。
 では、費用対効果を考えるとどうか? 社会的な費用があまりにもかかりすぎていないか?これが最大の問題でしょうね。また容リ法の目的のひとつに、企業に再資源化費用を負担させることによって減量化や減容化をうながすというのがありますが、 これは必ずしもうまくいってない。
 企業にとっても責任分担型のシステムだけれど、負担がさほど大きくないために、表に見えるような形では価格に転嫁できていない。よって、製造原価への組み込みが行われているとは思われません。 だから、企業から見れば、利益から持っていかれたという印象が強いでしょう。自治体は、分別収集や住民指導にたいへんな労力とコストがかかっているわりに、スムーズにいかず徒労感を抱いている。お互いが被害者意識を持っている。
 そして、法の制定を後押しした市民団体などは、ちっともリサイクルが進まないじゃないかと不満だらけ。三すくみの状況です。でも、前に進んできていることも認識するべきだと思います。
───課題解決には何が必要ですか。
拡大する企業の環境責任  一足飛びに解決しようとするのはムリですね。でも、今までの経験からいくつかの貴重な知見はみんなで共有して今後の検討をすればいいと思います。まず、何度も試行錯誤で改正を繰り返していくことがいいと思います。 ドイツのように明確な理念を政治的に合意しにくい日本の社会にあわせた段階的なアプローチを我慢強く推し進める必要があると思います。第二に、数字や具体的な事例をもとに、現状をあらゆる角度から議論し評価し、課題を共有化することが重要だと思います。 とりわけ、具体的な数値を明示して論じることが必要だと思います。理念だけでなく、実際的な検討が必要です。
 また、現時点での課題は、ハッキリしていると思います。先ほど言った社会的コストの高さは、そのひとつです。まず収集から再資源化に至るコストをきっちり把握すること。 そのためにも、現在多くの自治体の一般会計で処理されている分別収集費用を明確にする必要があります。現状の容リ法は、ゴミの減量化・減容化のためのシステムとしては費用がかかりすぎています。どんなシステムが社会的に効率的かを問わなければなりません。
 その際に問題になるのが費用徴収手法。排出者が直接負担するのか、間接的な税金という形で自治体が処理するのか、あるいは製品価格に処理費用を内部化させるか? 処理費用徴収にあたっての〈直間内比率〉を真剣に議論すべきだと考えます。
 循環型社会というあいまいな表現ではなく社会システムの変革を明示して関係者に明確な責任を求めていく時期に来ていると思います。市場は万能ではありませんが、各主体が合理的な判断をできるシステムが必要不可欠です。 現在の仕組みは何が合理的かよくわからない仕組みになっていると思います。

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