第三部企業・業界の現場から


吉田 陽
宝酒造株式会社
環境・業務部次長
プロフィール
1978年宝酒造株式会社入社。宣伝部門、商品開発部門、広報部門を経て1999年より東京事務所 環境・業務部次長。全社環境対策プロジェクト「エコチャレンジ21」事務局リーダーとして「緑字決算報告書」の編集を担当。
社外活動としては、ガラスビンリサイクル促進協議会 リターナブル部会長、日本広報学会 環境監査研究会 会員。
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発言要旨
容リ法は、リサイクルしやすい容器へのコスト誘導効果は出はじめたが、排出抑制への寄与は少ない。 宝酒造では、量り売りやリターナブルびんの拡大などにチャレンジしているが、これは環境規制が強まり事業者責任が拡大していく(環境コストが内部化される)、近い将来を見据えてのものだ。
消費者が環境への関心を持ち、環境配慮企業・商品を支援するためにも、企業や自治体が積極的に環境情報を開示していくことが必要だ。
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リサイクルという側面をとってみると、効果が一部出てきていると思います。たとえば、当社が指定法人に払う再商品化費用は平成12年度で約1億9000万円ですが、このうち1億4000万円がペットボトルの費用です。
お酒が中心の当社でさえ、これだけペットの費用負担が重い。500mlのペットボトルが多い清涼飲料水メーカーにとってはたいへんな負担のはずです。
ペットは容リ法で「マテリアルリサイクルを優先する」としているために、再商品化費用が高いのです。いっぽう、アルミ缶は有償で取り引きされているから費用負担が免除されています。
収益だって350mlの缶が120円なのに対して、500mlのペットは150円でしょう。だから、たしかにここ数年、消費者の支持や飲料メーカー間のシェア拡大競争のために、500mlのペットボトルの生産が急増しているのは事実ですが、
飲料メーカーのホンネとしては、500mlのペットはやめて缶に回帰したい気持ちを持っているはずです。リサイクルしやすい容器へシフトさせるという、容リ法がめざすコスト誘導効果がそろそろ出てくるのではないでしょうか。
リサイクルの側面だけを見るとたしかに成果があるのですが、Reduce、Reuse、Recycleと、本来ならば一番目に位置づけられなければならないReduce=排出抑制につながっていません。
少なくとも容器選択の場面では、ゴミの排出抑制にいちばん効果がある飲料容器であるリターナブルびんには、むしろマイナスに働いているような気がします。
リターナブルは、容リ法で再商品化の費用負担を免除されています。でも、これは1本あたり1円強の話。一方、リサイクルでもっともお金がかかる回収について、家庭から出るワンウェイ容器が自治体で回収されるのに対し、
リターナブルびんは我々事業者のコストで回収しなければならない。リターナブルびんはコスト高になるんですね。一升びんで試算しましたところ、これをワンウェイびんにすると、容器包装コストが約3分の2になるという結果が出ました。
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リターナブルびんの運搬に必要なプラスチックのP函です。これはレンタルなので、使用料が発生しますが、リターナブルびんを損傷なく回収するために不可欠なものです。
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ええ。企業のリターナブルびんを維持していこうという意欲を、法律が逆にそいでしまっているのではないか。そもそも、牛乳パックで20%、ペットボトルで24%程度しかリサイクルされていないものと、90%もリサイクルし、
環境コストを内部化しているリターナブルびんが、同列に扱われてしまっているのがおかしいのです。リサイクル率の低いワンウェイ容器などが、容リ法でリサイクルのおすみつきをもらっちゃった。
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──リターナブルびんにとっては向かい風という状況のなかで、宝酒造さんは、焼酎の720mlびんのリターナブル化に積極的に取り組んでおられますよね。
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2つの大きな理由があります。今後、循環型社会を推進していく上で、メーカーが回収責任を持つべきだという声がきっと出てくるでしょう。回収システムを維持し、ノウハウを持っていることが、将来の武器につながると判断していること、これが第1点。
1升びんや4合びんは、ビールびんとは回収システムが異なっており、回収業者として約2000社のびん商・びん問屋といわれる静脈産業が介在しています。
いま彼らは徐々に廃業に追い込まれていますが、このような仕事は循環型社会を支える重要なインフラであり、容器回収に関し100年以上のノウハウを持っている。この静脈ルートを衰退させてはならないということです。
もうひとつは、料飲店との関係ですね。容リ法が対象としているのは家庭系の容器包装だけで、事業系の容器包装廃棄物は対象外です。ワンウェイびんは、事業者である料飲店が処理する義務がありますが、以前は空きびんはカレット商に売れたのですが、
いまは逆有償といって、ドラム缶あたり何千円かのお金を払って処理してもらわなくてはならない。だから空きびんは酒屋さんに持っていってほしい、となるわけですね。酒屋さんだって困ります。これが、リターナブルびんですと、メーカーがひきとればいい。
料飲店市場を対象に見た場合、リターナブルびんの経済的メリットが出てくるわけです。
家庭系では環境コストが税金という水面下に隠れて見えないわけですが、事業系では表に出てくる。環境にいいものがコスト的にもいいという経済原則がある程度は成り立つのです。
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お客様がお持ちになったペットボトルを再利用するので、ゴミの減量に効果があります。これまでの商品流通、販売は、便利さと効率化を求めて人手を省いてきた。そのために資源とエネルギーが大量に投入されてきた歴史です。
これが使い捨て容器の拡大、自動販売機の普及につながっているわけですが、こんどは逆に人手をかけて資源・エネルギーを節約しよう、これが「量り売り」の発想です。
消費者や酒屋さんにとっては手間のかかる販売方法ですが、酒屋さんにとっては固定客の拡大につながったり、お店とお客様のコミュニケーションが生まれるなど、予想外のメリットも生まれています。
平成10年7月から関東地区で1キロリットルタンクでの試験販売をスタートし、昨年8月には200リットルタンクで全国に拡大しました。初年度、年間で2.7リットルのペットボトル約37万本が節約されたことになります。
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ええ。今後は炭素税や環境税の導入、各種規制の強化など、地球に与える環境負荷をコストとしてきちんと負担していこうという議論がさらに深まっていくことは間違いない。
いまはコストアップでも、自主的に環境対応を続けていくことで、将来必ずや企業にとってコストダウンにつながると考えることです。また今後、自動車でも家電でも、所有からレンタルへという動きが本格化していくでしょう。
量り売りのように、買いたいものだけを買っていただくというシステムや、本来必要とされるサービスだけを売るというマーケティングをさらに研究していかなければならないと考えています。
リターナブルびんの話に戻すと、リターナブルびんを復活させるためには、ドイツのように何%以上をリターナブルにせよとか、デポジット、家庭ゴミの有料化などの社会的なシステムによる拡大策もありますが、我々メーカーが、
消費者ニーズにあったリターナブル容器のヒット商品を生み出すことも、生産者としての重要な責任ですね。
おそらく今後、高齢化社会が到来するなかで、産業構造やサービス構造が変わっていくはずです。街の電気屋さんや小売店が新たな役割を担うようになる。地域の役割が見直されたり、ちがった形の宅配システムが登場するでしょう。
環境対応にプラスして、そういった社会的変化も視野に入れておかねばなりません。 |
やはり、環境問題に今以上に関心を持っていただきたいと思います。消費者がどう動くかというのが、今後の循環型社会を形成する上でのキーファクターとなる。
つまり、環境に配慮した商品や企業に購入という形で一票投じてほしいということですが、そのためには消費者に現実をきちんと理解してもらう、正しい選択をしていただくための情報が提供されていることが最重要です。
たとえば、ワンウェイ容器は行政が回収しているがいったい、どれくらいの税金がかかっているのか、缶やペットボトルの環境負荷の実態がちゃんと分からなければ選びようがない。
企業が環境会計や環境情報を積極的に公開していくと同時に、自治体も廃棄物収集にかかるコストを公開することが要求される。東京都水道局が最近環境会計を公表しましたが、こういった動きがもっと広がるといいですね。
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