つなぐ人の視線
今回は仙台において企業とNPOとをつなぐさまざまな仕組みづくりに取り組んでいらっしゃる、NPO法人せんだい・みやぎNPOセンターの紅邑晶子さんにお話をうかがいました。
このインタビューは2011年3月9日、東京にあるESD-J事務所で行われました。その日は東北地方で大きな地震があり、紅邑さんは携帯に送られてきた事務局からの写真を見ながら心配そうにされていたのを思い出します。が、その二日後にあんな大震災が起きようとは・・・。
せんだい・みやぎNPOセンターはその後、緊急支援の現地コーディネート拠点として様々な取り組みをスタートさせ、個人や企業による支援活動の水先案内役を務めてこられました。そして今、復興に向け、民間の力をコーディネートする新たな取り組みも立ち上げつつあります。
この原稿は、これからの東北復興に企業は何ができるのか、を考える上でもとても参考になる視点が紹介されています。
最後に、センターが今回の震災で新たに立ち上げた活動の紹介も加えましたので、ぜひご覧ください。
紅邑晶子(べにむら・あきこ)さん
広告企画・制作、編集等の仕事を経て、1995年6月、NPOということばに出会う。この出会いがきっかけとなり、「市民活動地域支援システム研究会」「仙台NPO研究会」に参加。1997年11月には、民間の市民活動支援組織「せんだい・みやぎNPOセンター」設立に参加。現在、特定非営利活動法人せんだい・みやぎNPOセンター代表理事。
企業とNPOがともに必要としているものを 一緒につくるのがおもしろい
■どうしてNPOと企業をつなぐことに目を向けられたのですか?
せんだい・みやぎNPOセンター設立(1997年)当初から、企業との関係についてはとても大事だという認識がありました。当時市民活動の中間支援という動きは少しずつ全国に広がりだしていて、行政とNPOとのパートナーシップは増えてきていましたが、企業との関係については、「お金を出してくれるスポンサー」という意味合いのほうがまだまだ強かったと思います。たとえば企業の人たちとNPOをつなぐための勉強会・情報交換の場を設けると、NPOの人たちが自分の団体の売込みをしたがるので企業側は困惑してしまって、あまりうまくいかないということもありました。支店は寄付などの権限を持っていないところも多く、そこだけに期待されると来づらくなってしまうんです。
でも企業はお金だけじゃなくていろいろな資源を持っているし、その資源が地域のいろいろなところと混ざっていくことによって、企業側にも気づきをもたらすだろう、そうやって「お金」じゃない面で企業にも社会の一翼を担ってほしい、そんな期待がありました。
■NPOとの接点作りにおいて、企業はなにに困っているのでしょう?
企業が市民活動の支援をしたくてもなかなかできないのはどうしてなのか、企業の意識調査を実施したところ、「どこに支援したらいいのか見つけられない」、「団体の情報が入手しにくい」、「支援をしてもそのフィードバックがなかなか得られない」、というところが見えてきました。とりわけ地方の企業は、社会貢献が兼務のところも多いので、支援先の調査やフォローアップのための時間もない、というのが共通の悩みでした。
これを解決するために企業側にも協力をいただき、2001年からスタートさせたのが“サポート資源提供システム(SSS)”です。地域の市民活動団体が必要とする資金以外の様々な経営資源(物品やパソコン等)を企業から集め、それを私たちが仲介・提供するというもの。資源提供を受けようとするNPOには、団体の活動や経営のデータを“NPO情報ライブラリー”に公開することを条件に登録していただき、毎年活動報告をいただいています。これによって、企業は安心して支援先を選べるとともに、活動報告をいただくための時間も省け、支援のハードルが低くなります。
また、資金提供に関しては“みんみんファンド”というシステムを立ち上げました。こうして提供した物やお金などの資源がどこでどのように使われたかも、“NPO情報ライブラリー”で公開しています。開始から8年半で約7000万円相当の支援となりました。現在では宮城県内の団体159が登録しています。
■「人をつなぐ」ための仕掛けもありますね?
企業の中の人たちにただ、「ボランティアでいろいろ動いてください」と言っても難しいものがあります。企業にとって敷居をできるだけ低くして関わってもらう機会をたくさんつくろうということで、年に一度、NPOの活動を企業や市民のみなさんに紹介するキャンペーン“せんだいCARES”を2002年からスタートさせました。さまざまなNPO活動情報誌という形で企業をはじめとする市民に広く配布します。それを見てもらって、まずは地域に「こういう団体があるんだ」と知ってもらい、面白そうなイベントがあれば参加してもらう、そのようなきっかけを作っています。足を運んで実際に人と人とが出会うと、その団体のメンバーになってくれる可能性も開かれますからね。
この情報誌の発行には、企業にも実行委員になってもらい、協賛金をいただいています。発行部数25000部のうち10000部は公共機関、10000部は企業、残りの5000部はその他で配布。実行委員の企業は、編集・発行に参画するだけでなく、紹介したNPOのイベントなどにも参加します。
■これまでで、「やった!」と手ごたえを感じたことはありますか?
“CARES”は点と点をつなぐ取り組みではないので、具体的な成果というのはなかなか見えにくいところはありますが、“CARES”で知ったイベントなどに参加して、直接市民活動の人に触れ合い、一緒に生き生きと動いている姿を見るのは嬉しいですね。あと、「“CARES”応援のための独自のポスターを作成して掲示しています」と応援メッセージをいただいた時も嬉しかった。
また、“CARES”に掲載されているフリースクールに、問い合わせの電話がお父さんからかかってきたことがあったそうです。それまで問い合わせといえばお母さんからばかりだったのですが、おそらく会社で“CARES”を見たお父さんがご自分のお子さんのことで連絡をしたのでしょう。企業を通すことでこれまでは届かなかったルートをつなぐことができたのではないかと思います。
SSSもみんみんファンドも“CARES”も、たぶんマーケティングに近い発想がうまく機能しているのだと思います。「顧客」としての企業が「買いたいもの」、つまり市民活動にどうしたら関わっていきやすいかを、企業から聞きだし、そうして得られた結果を仕組みにしてきましたから。
■「顧客」としての企業に、紅邑さんが「売りたいもの」は何でしょう?
「社会を変えることの面白さ」に気づいてもらうことですね。人々が抱える様々な課題に取り組んでいる人たちがいる、そんな人たちの存在も知ってもらいたい。企業の中だけにいると、「よりよい社会をつくること」と「自分の仕事」がどうしてもつながりにくいと思います。でも市民活動に関わることでその面白さに気づいたら、それは「自分の仕事」にもつながっていく可能性があると思うんです。そのためには、市民活動が企業から支援して「もらう」だけの関係ではなく、一緒に参加したり一緒につくったり、そういう対等な関係を築くことが大切だと思います。
配食サービスの運搬部分を社会貢献として支援している企業では、お年寄りが食事を受け取るために服装を整えて待っていてくれているのを運転席から見て、「物を運ぶ」という仕事のもつ意味を社員が再認識するいい機会となった、と喜んでくださいました。
■企業のCSRや社会貢献を考える上で、大切なポイントは?
一言でいうと、無理をしないことかな(笑)。会社の業種から遠く離れたことだと続かないので、なるべくつながりがあること、普段から社員が参加できそうなことを考えたほうがいい、とお勧めしています。
まずは、自分たちの仕事、自分たちの足元を客観的に見ること。そして一人ひとりの社員を見ること。CSRというと社会貢献のことにばかり向きがちですが、そこには「社員のため」という視点も大事な要素として入っています。そして、社員を見るときにはそのうしろの家族を見る、社員が担当しているクライアントがいる、そうやってつながっている人たちのことも考える。会社として、「地域社会に何ができるのか」というのと同じくらいに「社員に対して何ができるか」を考えていけば、そこから自ずと、会社にある資源を生かした形で無理なく社員と一緒にやれることも見えてきます。
ボランティアを無理に強いるのではなく、社員に提供できる情報として社会貢献を紹介する、それを受けた社員がどう動くかはそれぞれの問題で、その機会を社員に与えることはすごく意義のあるCSRだと思います。
■ありがとうございました。
<東日本大震災関連情報>
せんだい・みやぎNPOセンターが、震災復興にむけて民間の力を結集すべく立ち上げた活動をご紹介します。みやぎ連携復興センター
http://flat.kahoku.co.jp/u/renfuku/
地域の団体どおしの連携により、民間が中心となって取り組む被災地復興とまちづくりをテーマとした「復興に向けて行動する市民を生み出すプロジェクト」です。
被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト(略称:つなプロ)
http://blog.canpan.info/tsunapro/category_1/
被災地で、これ以上の死者・状況悪化者を出さないために、避難所での課題や困りごとを発見して専門性の高いNPO等への支援につなげることをミッションとする合同プロジェクトです。
東日本大震災NPO/NGO支援情報ブログ
http://www.minmin.org/shinsai/
東日本大震災直後のNPO/NGOの活動情報を当センタースタッフが収集して、発信し続けています。被災地支援の情報やボランティア募集や助成金情報などを提供しています。
はばたけ!みやぎNPO復興活動応援基金(略称:はばたけファンド)
http://www.minmin.org/shinsai/archives/649
県内のNPO向けに当センターに寄せられた寄付金を助成金として提供。被災地支援を行っている団体や被災して活動拠点を失った団体を対象に短期間での資金支援を実施しています。
一般財団法人 地域創造基金みやぎ
http://www.minmin.org/foundation
地域の課題を解決することを目的とする組織や個人を対象に資金支援を行う、新財団を震災直後であるからこそ、必要な機能であると決断して約1か月で立ち上げました。新しい市民参加型基金として秋には公益財団を目指して活動していく予定です。
当センターでは、震災後に上記のような新たな事業を立ち上げ組織をあげて取り組んでいます。被災地にある中間支援組織として果たすべきことをこれまで関わりのあった支援者の皆様のご協力を得て、力強く動いていきたいと思います。復興までの道のりは長いものになると思いますが、全国の皆様からのご支援とともに市民参加による対話を大切にして、セクターを超えた連携のもと地域の再生に貢献できる活動を続けていきたいと思います。
(特定非営利活動法人 せんだい・みやぎNPOセンター代表理事 紅邑晶子)
(更新日:2011.12.15)
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