美しい味の日本 特集 Vol. 1 神の魚ハタハタ(秋田県男鹿半島)
謎多きなまはげ、その面の多様さに脱帽

なまはげ祭
『男鹿真山伝承館』では、重要無形文化財である、なまはげ文化に触れることができる。古民家の中で待っていると、真山に暮す近所のおじさんたち扮するなまはげがやってくる。だが、知らなかったのは、そのオーという面の底でくぐもったようなうめき声の迫力。屋敷に入ってくる時も、ドンと威勢良く戸を鳴らし、そのたびにびくっとする。
だが、凄いのは、これが生きた祭りであること。そもそも、この伝承館は、この裏に立つ真山神社を拠点とする『日本回帰文化研究所』(平成5年発足)が母体なのだという。「古いものがどんどん失われていく中で、残せる文化は残していこう」と、地元の歴史家や小学校の先生などが集まった。そう教えてくれたのは、若き神主の小林さん。
「子供を恐がらせるイメージばかりが先行していますが、本来、なまはげは、包丁も持たず、角もない神の使いでした。赤山神社が本山で、その赤神の使いだと言います。」その赤山神社には、なまはげ伝説のひとつ、大昔、漢の武帝が五匹の鬼を引き連れて大陸からやってきて、その鬼たちが作ったという九九九段の階段が残っている。いろいろな起源説の中で有力なのが異邦人説。面の風貌といい、文化が行き交った日本海に張り出す男鹿半島の地形といい、これは頷ける。「なまはげは、本来、海のかなたに神聖なものがいるという信仰から生まれ、家中の厄を祓うものでした。ところが、明治以後、ここが稲作地帯になり、昭和に入ると出稼ぎで男たちが大晦日にいないという状況が生まれると、なまはげのしつけとしての性格が強くなっていったのです。」

なまはげ祭
近頃、子供の数も減るなど文化の継承に危機感を覚えるという小林さんだが、それでも、このさして広くもない男鹿半島だけで90のうち60地区でなまはげが残っている。
それも不思議なことに、どの面も一つとして同じではなく、中には200年前の面も残っている。なまはげは、厄を祓う一方、共同体のつながりを確認するための存在でもある。それが、こんなにも守られている男鹿というのは、つぐづく不思議な半島である。
また、ここには、首都圏が緊急事のための石油備蓄基地や、災害時用水である『滝の頭水源』もあった。こんこんと湧く伏流水を飲んで生き返った一行の誰かが、「それじゃ、年に一度は“男鹿をおがもうツアー”やんなきゃな」と呟いた。



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