地大豆に目覚めた豆腐屋さんたち

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「大桃豆腐」の大桃さん
 『トージバ』がもうひとつ掲げているのが、大豆の在来種を守っていこうというテーマ。町の普通の豆腐屋をのぞくと、がんばって国産を使っている志の高い店では、九州のフクユタカや東北のエンレイなどといった大豆の名が一般的。ところが、全国には、全国で300種以上の在来の大豆があるといい、まだ名前も由来も定かでないものを含めれば、潜在的にはもっとあるという。

 『トージバ』の渡辺君と神崎君は、去年から、こうした希少な在来種、たとえば山形県の紅大豆や秘伝、千葉の小糸在来といった地豆や、これで作った味噌などを、別会社『雑<ザッツ>』で販売も始めた。

 彼らに数年前、この小糸在来で豆腐を作って欲しいと頼まれたのが、池袋にある『大桃豆腐』だった。同じ『トージバ』が企画する東京朝市『アースデイマーケット』で売るのだという。その頃、すでに国産大豆ばかりの豆腐を作っていた大桃伸夫さん(45歳)は、そんな縁もあって、その後、気に入った在来種の大豆を、千葉や茨城の農家に、豆の選別は自分らでやるから、ぜひ作って欲しいと頼むようになった。


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「山口物産」の山口さん
 そして大桃さんが味で選べばやっぱり国産。もともと家畜の飼料だったアメリカの品種はぴんと来なかった。かなたから運ばれる豆は、腐敗を防ぐために乾燥し過ぎて風味が落ち、ポストハーベストの問題もあった。そんな時、埼玉県都幾川村で、地元の大豆だけを使い、村の活性化に貢献したという『とうふ工房わたなべ』の渡辺一美さん、おいしさにこだわる豆腐屋の会(山下健さん会長)『遊心』にも刺激を受けた。

 大桃さんが最初に手がけたのは、岩手県一関の大豆スズカケを使った豆腐作りだった。一ノ関の物産展が、毎年のように池袋で開催される。なぜだろうと思って訊ねてみると、豊島区の災害時の食糧援助をしてくれる農村地帯だという。ならば、自分たちにも何かできることはないかと考えた。たまたま、店に訪ねてきた練馬区の豆問屋『山口物産』の山口博君にアイデアを打ち明けると、それは素晴らしいということで意気投合し、仲間の豆腐屋を5軒ほどを誘って、一緒に一ノ関に出かけた。3度も足を運ぶと、ようやく身を乗り出す農家が現われ、スズカケを使った池袋豆腐が実現、その関係は、今も続いている。


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温めた豆乳の被膜をすくった「くみ湯葉」
 そもそも日本が大豆の自給率を激減させたのは、戦後、食糧難にアメリカから配給大豆に支えられた時代からの輸入依存の体質にある。それでも輸入自由化になる1960年までは28パーセントを自給。大豆は、米、麦、小豆、粟とともに『古事記』(712年)の五穀の一つにも数えられる日本古来の作物である。各地の豆腐や味噌は、もともと地大豆で作られるものだった。それが、問屋の山口君によれば、今では約500万トンの大豆をアメリカから輸入。その多くは、家畜の飼料や、ドレッシングやサラダ油、菓子類に使われる大豆油。それでも醤油、味噌は9割以上、納豆は約8割を、輸入豆になおも依存している。「国産17〜18万トンのうち、約半分は豆腐になっている。煮豆は8割以上が国産。豆腐の業界は、なかなか優秀なんです」という。

 そんな山口君は、遺伝子組み換え大豆を一粒も扱わないと心に決めた。アメリカの取引先にも種から選別までを一貫、完全なトレーサビリティーを確立した。北海道の青鶴の子、茨城在来、千葉の小糸在来など15種ほどの在来種も扱っている。「改良品種は、甘みはあるけど香りがないとか、そういうものが多いのに比べて、在来種は、香りも甘みもあって、それぞれ違う」と各地を飛び歩いている。

 そして、「大桃さんは、そういう豆の性格をわかった上で、豆に合わせた豆腐作りができる数少ない職人」と絶賛。一般の豆腐屋では、豆を煮ればぶくぶく立つ泡を消すために消泡剤を使うが、これも一切、使わない。そして、圧力鍋のふたを頻繁に開けては、櫂と呼ぶ木の道具で、何度もかき混ぜる。「濃かったかな」と呟いては、水を加える。豆の性格に合わせたこの微調整が、豆腐の命である。


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櫂でかき混ぜ濃度を調整
 その大桃さんは、小さな町の豆腐屋が元気であって欲しいという。「今、東京都だけで960軒、残っているという豆腐屋も、月に4〜5軒の割で潰れているそうなんだよ」。

 近頃は、豆腐も高級なおとり寄せアイテムになっているが、本来、豆腐はデイリーなものだから、地元の人と深くつながっているし、法外に高くする気もない。そんな豆腐屋が、面白い国産大豆で活力を取り戻し、地元の商店街を引っ張っていって欲しいという。

 今や、大桃豆腐はおいしいと、山の手線を半周してまで豆腐を買いにくる通もいる。

 2年前から大桃さんは、山口さんや『黒澤豆腐』の黒澤さんなど仲間の豆腐屋といっしょに、耕作の難しい畑を借りて、お客さんと大豆や味噌作りを始めた。

 「おいしい豆腐をつくりたい一心で行き着いた国産大豆、それに在来種だけど、農家に通い出してからは、やっぱり国産大豆を使わなきゃとますます思う」。



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すりつぶされた豆から甘い香りが立ち上る
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木綿で濾すのも重労働


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冷たい水の中に放たれた豆腐
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出来上がった「木綿豆腐」


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揚げたてふわふわの「油揚げ」
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具を入れて揚げた「がんもどき」



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『大桃豆腐』三友食品
URL : http://www.ohmomo.com/
東京都豊島区池袋3-61-10
TEL&FAX : 03-3971-3817
現在、修行中の周浦宏幸さんは、もともと土地再生機構で再開発を主に生業にしていた人。元来、食や環境にはこだわりをもってきたという彼、思い切って転職し、むしろ対極の世界に身を投じた。国産大豆の豆腐作りにこそ未来を見出した若者である。

『山口物産』 URL : http://daizu.co.jp/gaiyou/
『とうふ工房わたなべ』 URL : http://www.11-12.co.jp/
「黒澤豆腐」  

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