スローライフ談話室 自分の生き方さがし、自分の幸せさがしのために

第47話 木村 秋則(自然栽培農家)「自然栽培」

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雪残る2月から手がける剪定。その年の収穫に影響する大事な作業である。

 皆さんこんにちは! 久々に書かせてもらいました。青森県の百姓 木村秋則です。

 昨年は、私には忘れる事の出来ない一年でした。それは30年歩んできた自然栽培、中でもりんご栽培の悪戦苦闘の様子がNHKとTBSの番組で紹介され、全国からあまりに大きな反響があった事でした。自然栽培のことをかいつまんで書いてみます。

 りんご無収穫期間が長かったので、りんごの樹の下にキャベツ、トマト、メロン等を栽培し、ウネの高さや植え方、耕起を大きく粗くが良いのか、又逆に細かく耕したら成育が良いのか、多様な栽培を試験し、共通している事がある事に気づきました。それは、どんどん品種改良が行われ、多様化するお客様のニーズに合う様に種苗会社は取り組んでいますが、いくら品種改良されても、原種の遺伝子は残っているのではないかと考え、図書館で百科事典を調べ、その原種がどのような環境に育っていたのかを調べ、その環境に近い状態を再現したりしてみました。

 例えばトマトの場合、極めて雨の少ない所に育っていたと辞典から判断し乾燥状態を再現するために高いウネに植えたり、逆にキュウリは、雨の多い所と書かれていたので、ウネを作らず逆に少し掘って多湿状態にして植える等試みました。又、トマトの場合、強風で支柱が折れていたのに気づかずにいたら茎が土と接した部分に根が出ていたのを見つけました。このトマトは他よりも生育が良く着果量も多く、病害虫の発生は逆に少なかったので、その側に今度はそのまま横植しました。しかし、数日後枯れました。この原因は、土の中では葉から腐りが発生し、やがて茎も腐りはじめ枯れた事がわかりました。今度は、葉を全て取り除きその箇所を少し乾燥させてから横に植え、土をかけました。今度は、どんどん成長を続けました。しかし、私の所は北国で、10月を過ぎると気温も下がるために、着果はしたが着色はしませんでしたが来年への挑戦に夢が一つ増えた訳です。又同様に、稲作も一年に一度しか試験の結果を見る事は出来なく、一つの答えを得るまで数年過ぎていました。

 イネの成育おうせいなものは地下部の成育も良い事を知っていたので、一年に何回も試験結果を得たいと思い(実際の水田でやると気の遠くなる年月を要するために)、ガラスコップに土を入れ、その土の固まりの大きさによる発根の違いを調べました。更に、別のコップには水を入れ割りばしを利用して土と水をかき混ぜ、一般水田の代(しろ)かき状態を再現し、田植えと同じくイネ科の雑草を植えて成育を調べました。この方法だと年に6回もテスト出来た次第で、更には、普通、土の中は見る事が出来ないのがガラスのためにその様子が手に取る様にわかりました。この実験での好結果を翌年実際の水田で再現したが、コップと実際の水田では違うという結果を見て、どの様に作業すべきか、又、ガラスのコップ栽培を試験する事を繰り返し、あれこれしているうちに3年が過ぎていました。その間、収量は10a当り300〜330kg位ときびしいものでした。水田には稲よりも野ビエが目につき、りんご畑の姿は放任園、周辺からは、「かまど消し」のやる事だ、と皮肉たっぷりに言われていました。

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自然栽培の稲の前で。(撮影:長谷川裕市)

 その翌年、コップの土と実際に水田の土との違いは何かを考え、私のトラクターで一番の粗耕起。ゴロゴロ状態を白っぽく見えるまで乾燥させた。田植え直前に行う代かき作業は極めて粗末?にした。するとどうでしょう、田植え作業は辛かったが、稲の生育は七月半ばを過ぎてから隣人が肥料を入れたのか?と問う程の元気な姿になり、この年に初めて一般水田と見劣りしない姿で収穫を迎え、450〜500kg/10aの収量を得た次第です。そして前年迄の野ビエは殆ど姿を見せませんでした。ガラスコップのテストは間違っていませんでした。

 りんごが実っていなかったので、野菜と米の研究が出来たと考えています。りんごの樹が私にもっと自然の生態を研究しなさいと言っている如くに思いました。そして、余りにもりんごの無収穫時代が長かったので生活もままならなくなり、この水田を手離さざるを得なくなり、6年間稲作を休みました。その後、好意ある方から借用し、同様の作業をし、540kg/10aに到りました(私の周辺での一般栽培は550〜600kg/10aです)。

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真っ赤な実をつけ、収穫を待つばかりのジョナゴールド(10月)。甘酸っぱくて香りがよい。

 肥料、農薬、堆肥等を全く使用しないでの栽培⇒自然栽培の参考書は殆どありません。それも現代農業栽培では当然かも知れません。私は前述した試行錯誤の繰り返しから得た技術を全国の希望者に伝えています。私の経験から得た技術を次の世代の人達が更なる研究を重ね、より安定した栽培技術の確立に努力される事を切望する次第です。そして、農地の汚染により、河川の生態が崩壊し、やがて海水の汚染へと繋がります。現代農業は豊富な安定供給と言う大義を果たしてきましたが、日本の食料の自給率は極めて低く、将来を危惧される程で、見かけの豊富な食は世界からの流通による力が大きいと考えられます。不可能と百数年言われ続けてきたりんごでも自然栽培が可能に至った現在、人間の命を続ける必須要素の「食」を真剣に考えていくことを提案します。食の崩壊は環境破壊のみならず、文化の崩壊も引き起こす可能性を秘めていると考えます。物質文明の現代こそ人間ルネッサンスが必要ではないでしょうか。

 この度出版した本には野菜、水田の作付マニュアルも付記してありますので、自然栽培の実際に触れてもらえれば、又、家庭菜園等の参考になれば幸いと存じます。長々の文章拝読下さりありがとうございます。

>>スローライフ談話室第26話もご覧ください

PROFILE

木村秋則
昭和24年生まれ
昭和47年から農業はじめる
昭和49年から肥料、農薬、堆肥を使わない自然栽培開始、現在に至る
著作:「自然栽培ひとすじに」創森社発行

[書籍紹介]

自然栽培ひとすじに

■著者/木村秋則

■出版社/創森社

■定価/1,680円(税込)


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