三間千珠子(製塩業)「出会ってしまった伊豆大島と塩づくり」

井戸小屋

濃縮棟の中

6トン釜

蒸気釜

遠心分離器

選別作業
私が初めて塩づくりにふれたのは10年ほど前のことになります。特に塩に関心があったわけでもなく、たまたま嫁いだ先が製塩業だったという話です。
ここ伊豆大島ではその昔、塩づくりがさかんに行われていたそうです。海に囲まれた土地がら農作物はなかなか育たないので、魚を獲ったり塩をつくったりして物々交換していたそうです。
そんな知識も何もないまま伊豆大島へ嫁いで来てしまいました。自然が多くて「見るのも触るのも初めて!」がいっぱいでした。もちろん塩をつくるのも初めてです。どうやって出来上がるのかも知りませんでした…。そんな私も今ではすっかり島人。3人の子供たちと一緒に家の周りで育っているあしたばを摘んで料理したり、くわの実を採って食べたり、自然がある生活もなかなかです。でもまだまだ虫は私の天敵です。
せっかくなので、ここでちょっと皆さんにも塩がどうやって出来るのか知ってもらいたいと思います。
海水を汲み上げる〔井戸を掘って地下300mからポンプで汲み上げる〕 → 天日で海水を濃縮 → 熱を加えて更に海水を濃縮 → 蒸気釜で加熱 → 結晶してくる → 冷ます → 遠心分離機で脱水〔塩とにがり(豆腐をつくる材料)に分ける〕 → 塩の選別〔硫酸カルシウムの塊などの除去〕 → 計量・袋詰め
という感じです。塩をつくるという作業自体は単純なものですが、時間もかかるし、基本的に力仕事なので正直かなりキツイです。特に夏場には釜を焚いているせいもあって、工場内は蒸し風呂状態になってとけてしまいそうな感じです。私も若いころは主人の製塩を手伝ったりもしていましたが、気持ちは若くても体はきっちり歳を重ねていくので、今は選別や事務処理を手伝っています。
うちの塩の特徴は「伊豆大島地下深層海水」を100%使用していること。「伊豆大島地下深層海水」というのは火山島だからこそできる地下海水です。三原山が噴火を繰り返し、玄武岩質の溶岩や火山礫などが幾重にも積み重なってできた伊豆大島。島の内部は隙間だらけだそうです。こうした隙間を通り、途方もない長い年月を経て自然濾過・浄化された海水を、地下300mの水脈から汲み上げたものです。この「伊豆大島地下深層海水」を天日で濃度を高めて蒸気釜で煮詰めると、海・土・火山のミネラルが融合した不思議な力を持つ塩が出来上がります。まさに大自然、母なる海からの贈り物です。
「なぜ海なのに地下なのか?」こんな質問がありました。簡単に説明すると、地面を深く掘っていく(ボーリング)と地下に浸透した深層海水に当たり、それを汲み上げた海水だから「地下」になるのです。

前列左より長女・伊舞希(いぶき・小1)、長男・功大(こうだい・小3)、後列左より千珠子、次女・葵夏(きっか・4歳)、父の伊織(工場長)
今、世間では食品における「安全性」が何かと問題になっています。口に入るものを疑いながら確かめながら選ばないといけないなんて、主婦として母親としては悲しいことですね。こんな時代だからこそ、人の手で、舌で確かめながらつくっていく、育てていく、こういう昔ながらのやり方がもしかしたら大事なのかもしれません。塩も食品です。たかが調味料されど調味料。塩の種類、ひとつまみの違いで味も変化します。身体にとってなくてはならないものだからこそ、良い塩選びをしてほしいものです。
そんなこんなで私も塩屋として何とかがんばってはいますが、まだまだ日々勉強中です。楽しく塩をつくって、使ってもらって、喜んでもらって、みんなの心が潤う。それが理想です。
- profile
三間千珠子 -
東京都立川市生まれ
結婚を期に伊豆大島での暮らしがはじまる。
現在は工場長の夫、3人の子供たち(1男2女)と家族5人で仲良く暮らしている。
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