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ところで、去年の夏、山中湖畔でライブを行なった際、彼女はファンにある呼びかけをした。
「富士山のふもとでコンサートということで、“富士山と言えば…”と考えたときにいちばん最初に浮かんでしまったのが、どこから見てもきれいだなあっていうあの美しさと、もうひとつがゴミがひどいせいで世界遺産に選ばれないっていうことだったんですよね。“富士は日本一の山”と言ってるのに、不名誉な横顔も持ってるんだなっていう。で、わたしはそのなかの一部分をお借りするんだから、山中湖サイドだけでもピカピカにして帰りたいなって思ったんです。人が集まると絶対ゴミが出るじゃないですか。コンサートやったけど、終わった後、片付けるのは大変だったよねっていうふうになるのは良くないって思って、それで“ゴミをひとつ出したら3つ持って帰ろう”キャンペーンというのをやったんです。ファンの人たちはちょうどお父さん、お母さんになる世代でもあって、子どもさんと来てくれる人もいて、そのお父さんやお母さんが“ゴミがひとつ出たから、ゴミを何か拾って帰ろうね。分別しようね”ってやれば、それを見てる小さい子たちはそれが当たり前に感じるようになっていくだろうし。で、ウチの舞台監督さんがバラシっていう、ステージ周りの片づけが終わったときに、“見事だったよ”と、携帯電話から連絡してくれたんです。チリひとつないっていうのはこういうことを言うんだなっていうくらい、コンサート会場がきれいだったんですって。“オレがちゃんと目撃したんで、報告します”っていうその電話の話を聞いて、思ったんですよね。信頼感で結びついてるんだなって。だって、“美里は、ああいうふうに言ってたけどさ…”、ポイッ!ていう人がいたっておかしくないわけですから。でも、そういう人がいなかったのは20年間のスタジアム・ライブで培ってきたファンの人とのつながりなんだろうなって。世の中、嫌なニュースは山のようにあるし、辛いニュースもいっぱいあるけど、でもやっぱり捨てたもんじゃないなって思う人々もたくさんいるんだということをあらためて去年感じさせてもらって。それに、声を大にして言うよりも普通のトーンで普通にしてて、そういうふうにできることがわたしのなかでは理想だったので、その第一歩を踏み出せたような気がしてすごくうれしかったんですね」
20年間のライブでつながっていったもの。それは、「みっともないことはしない」という意識だろう、と彼女は言う。
「私自身が自分のことを思い返してみて、みっともないっていうことこそ嫌なんですよね。いいかっこするっていうこととは別に、“いいか…”ポイッ!みたいなことだけはやりたくないっていう気持ちはすごぉくあって…。わたしは、おバカなこともいっぱいしてきたと思うし、ある種わがままだなっていうことも言ったりやったりしてきたと思うけど、みっともないことだけはしてこなかったなっていうのは、自分の生き方のなかでは言える気がするんですね。で、その“みっともない”というのは、人に対してというよりも、ずっと高いところから俯瞰で見たときに自分自身が自分を許せるかどうか、ということなんだと思うんです。だから、“もったいない”という言葉をマータイさんが素敵な日本の言葉だと言われてましたが、“みっともない”というのも昔の日本の人にとってもすごく重要な言葉だったと思うんです。みっともないことはしないっていうのは当たり前っていう。そういう感覚がずっとつながっていけばいいんじゃないかと思うんですけどね」
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