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意識を未来に向けたとき、大切なのは想像力、と彼女は考えている。
「“苗木を植えました。環境にいいことをしました。だから、地球が良くなります”っていうことではないですよね。その苗木が育っていって森になったときには、もうわたしたちはいないかもしれないけど、わたし自身がほおずきを鳴らせなかった時代から季節感を大きく深く感じさせてもらってきてたものがちょっとずつ形を変えてきてしまっていることに対しては責任がありますよね。わたしたちがこれまでに体感してきたことのなかにはたくさん素敵なことがあって、それを次の世代の人たちにも感じてほしいし、そうするためには元の形に近づけるということが必要になってくると思うんですよね。そのことをイメージすると、今からやっておかなくちゃいけない。もっと早くからやっておけば良かったんだろうけれど、それにしてもこれからでも意識することがまず大事だから。そして、そのためには生活感というのかなあ。そういうものを実感できる暮らしができるということが必要なんだろうと思います」
彼女自身、そうした普通の感覚で実感的に自然と向き合う暮らしの素敵さをあらためて感じてきたばかりだ。
「つい3、4日前にオーストリアのザルツブルグから帰ってきたんですけど、それは映画『サウンド・オブ・ミュージック』に関する番組の仕事で行ってたんです。あの映画は1963年にできたそうで、その映画のシーンを辿っていく番組だったんですけど、現場に行って“この山の形はなんだか見覚えがあるなあ”って思ってたら、映画のシーンになった山や湖がそのまま残ってるんですよ。で、今はちょうどいい季節なのでみんなが夏山に登りにくるんですね。“あなたは自分に何を課してるの?”って聞きたくなるくらい、自転車で3000メートル級の山に挑んでるんですよ。しかも、わたしよりもずっと年齢が上の人ばっかり。そういう人たちの自然に対する意識っていうのかな。もちろん、クルマはアイドリングしない、なんていうことは普通にやってるし。それがすぐイコールというわけではないんだろうけれど、だからこそ見覚えのある山がきちっと残ってるということになるんだなあって思って。で、そこは7000年くらい前から塩を採ってるんです。ザルツブルグというのは「塩の城」っていう意味なんですって。塩を採るところは“塩鉱”というらしいんですけど、7000年前に塩が人間の材になると思った人はすごいなと思ったし、今も同じように採ってるっていうのは素晴らしいなあと思って。それから近くには、世界最大級の氷穴があったりして。だから、向こうの人たちの自然というものに対する接し方が“さあ、山に登るゾ!”って感じじゃなくて、もっと普通に、当たり前のように出かけて行ってて、それで素晴らしい自然に直接触れ合ってるわけで、そりゃあ意識も変わるだろうなって思いましたよね」
今年の夏は、横浜と熊本で野外ライブが決定している。そこでもまた、彼女は呼びかけをするだろう。
「1回だけやればいいってことじゃないですからね。コンサートに来てくれるみなさんは、“みなまで言うな”と思ってると思いますけど(笑)。まあ、去年やれたことは今年もやろうよってことですよね」
黄色いワンピースに飛び散ったほおずきの紅を彼女が印象深く覚えているように、彼女の歌が夏の夜空にとけ込んでいくのを、そしてそのライブの後でみんなが身の周りのゴミを始末して帰る光景をライブに集まった人々は、とりわけ子どもたちは頭の片隅に刻むことになるだろう。そんなふうにして、渡辺美里の音楽と気持ちはつながっていくのだろうと思う。
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