地球環境をどう守るのか

1957年生まれ。東京都出身。
1980年東京大学経済学部卒業。
日本専売公社、日本経済研究センター、
経済企画庁総合計画局、
(株)三和総合研究所
(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
主席研究員等を経て、現在は獨協大学教授。
環境対策は焦眉の急だ。だからこそ、見た目よりも実質を取らなければならない。日本にはそれを可能にする技術力がある。
森永卓郎さん
経済アナリスト
世界中を襲う異常気象や生態系の変化をみていると、地球温暖化を防ぐための取り組みを、強めないといけないことは明らかだ。ところが、実際に取り組まれている地球環境対策は、実質的な温室効果ガス削減と必ずしも整合的でない場合が多い。それは、環境対策への取り組みが、見た目に華やかな方向にどうしても傾いてしまうからだ。
第一の事例は、バイオ燃料だ。アメリカのブッシュ大統領は、地球環境を守るために2012年までにガソリン消費の20%をバイオ燃料に切り替えるとして、補助金まで出してトウモロコシをバイオエタノールに転換する政策を打ち出した。しかし、あまりに急激な転換を行って、人間や家畜が食べるトウモロコシまで燃料にしてしまったおかげで、トウモロコシの価格が急騰した。それをみた小麦や大豆やオレンジの農家が儲かるトウモロコシに転作してし、小麦や大豆やオレンジの価格までが高騰してしまった。穀物の国際相場が平時の3倍にまで上がったことで、途上国は深刻な食糧危機に陥り、暴動が相次いだ。ところが、トウモロコシからバイオ燃料を作ることで得られる温室効果ガスの削減効果については、学者の間で意見が真っ二つに割れている。地球環境に大きなプラスの効果があると主張する学者がいる一方で、むしろマイナスだと言う学者もいるのだ。一番極端なことを言う学者は、バイオ燃料を1リットル作るのに、トウモロコシとは別に石油が1リットル必要だという。私は、バイオ燃料を否定しないが、大規模な導入は効果が十分に立証されてからにすべきだろう。
第二の事例は、ヒートポンプだ。ヒートポンプは、もし我が国すべての事業所や家庭の冷暖房に導入することができれば、それだけで京都議定書の温室効果ガス削減目標を達成できてしまうという試算があるほど効果が大きい。それなのに普及が進まない最大の原因は、太陽光発電や風力発電よりも地味で、17世紀に発明された古い技術だからだろう。
第三は、埼玉県、東京都などの地方自治体がコンビニエンスストアに深夜営業の自粛を求めようとしていることだ。24時間、年中無休で、煌煌と照明を点灯し続けるコンビニエンスストアは、全国に4万軒も存在するために、国民の目にエネルギーの無駄遣いの象徴として映りやすい。ただ、コンビニエンスストア業界が排出する二酸化炭素は全体の0.2%しかないうえに、深夜営業の停止で減る二酸化炭素はそのまた4%だ。つまり深夜営業を停止で減る二酸化炭素の排出量は、わずか0.009%に過ぎないのだ。それだったら、コンビニエンスストアの断熱性を高めたり、蛍光灯を発光ダイオードの蛍光管に切り替えることで、同じ程度の省エネ効果は得られるはずだ。
環境対策は焦眉の急だ。だからこそ、見た目よりも実質を取らなければならない。日本にはそれを可能にする技術力がある。地球環境保全をファッションにしてはならないのだ。
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