ブナ林が少なくなると、年間2300億円を超える損失も

ブナ林の減少により、生態系が失われるのはもち
ろん、災害の発生など人間社会にも大きな影響が
ある
2009年12月にデンマークで開催された国連気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)では、紆余曲折の末、主要26カ国とEUによる「コペンハーゲン合意」がまとまった。世界は今後、温室効果ガスの排出量を削減するための努力に一層力を入れていくことになる。しかし、温室効果ガスの濃度を二酸化炭素(CO2)換算で450ppm付近に安定化し、産業革命前からの気温上昇を2度以内に抑えたとしても、洪水や土砂災害の発生や自然環境への影響など多くの被害が生じると予想されている。なかでも、日本を代表する広葉樹林であるブナ林は、温暖化によって大きく衰退するといわれている。
夏に葉を付け、冬に落葉するブナ林は、縄文の昔から日本人の生活を支えてきた。その最大の特長は、スギなどの常緑樹林とは比べ物にならないほど豊富な生物多様性だ。日本には現在、約2万3000平方kmのブナ林があり、クマやカモシカなどの大型鳥獣をはじめ、さまざまな動物や昆虫が生息している。また、いろいろな種類の草や樹木、キノコなどが息づいており、固有の生態系を形作っている。さらにブナ林には、「天然のダム」ともいうべき高い保水効果や災害防止などの機能がある。しかし、私たちに多くの恵みを与えてきたブナ林の生育に適した地域の面積は、温暖化の進行に伴って失われつつあり、今世紀末には1990年に比べて最大で約7割、対策をとった場合でも35%は減ると予測されている。とくに、東海・中部・近畿、中国・四国・九州では、広い面積で失われるかもしれないのだ。
そして、ブナ林が減ることで生物多様性が失われたり、災害防止機能が落ちたりすることによる被害コストは、今世紀末に最大で年間2300億円を超えるという試算もある。一方で、ブナ林を危機的な状況から救うために、各地でさまざまな取り組みが行われている。たとえば、青森県の白神山地では、開発により伐採されたブナ林を元の姿に復元しようと、同地で採取されたブナの種を苗床で育てて、苗木として山に戻す保護活動が、NPOや地元自治体などの手により続けられている。200〜400年という長い年月をかけて成長するブナの木。温暖化による影響からブナ林などの緑の森林を救うことは、日本の生態系を保全するのと同時に、私たちの社会や暮らしを守ることにもつながるのだ。
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