国連食糧農業機関によると、世界の森林面積は、地球の陸地面積の約30%を占め、約39.5億haである。しかし、熱帯林を中心に森林面積が減少しており、2000〜2005年の間に毎年730万haの森林が減少した。森林破壊の原因としては、森林の農地への転換や過剰な伐採、違法伐採、森林火災などがあげられる。
皆さんもご存知の通り、森林は地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の吸収源のひとつであり、その量は283Gtを上るという推計もある。世界全体のCO2排出量の約20%が森林減少によるものであるともいわれており、森林減少によって大気中のCO2の増大が懸念されているだけでなく、更にそれを燃やして二酸化炭素を放出することにより、温暖化を加速させるという懸念もある。
このような中、英国の排出量取引企業であるエコセキュリティーズ社とカナダ・ブリティッシュコロンビア大の研究グループが発展途上国で進む森林の破壊を防ぐことで大気中に排出されずに済んだ二酸化炭素を「排出枠」として先進国に販売する仕組みをつくれば、年間15億−90億ユーロを途上国に供給できるとの試算結果を発表した。
以下の掲載内容は、この論文の翻訳内容を日本語で初めて紹介するものである。少し難しい内容かもしれないが、是非、ご一読を。
森林破壊回避によるカーボンファイナンスの創出と気候変動防止、生物多様性保全、人間社会の開発への効用
著者:ヨハネス・エベリング(英国エコ・セキュリティーズ)
安江麻衣(カナダ プロジェクト・シーホース)
概要
開発途上国に対して森林破壊回避による温室効果ガス削減の補償を支払うといういわゆるRED(Reducing Emissions from Deforestation)という考え方は2012年以降の気候変動レジームにおける一つの取り組みとして最近注目を浴びつつある。本論文では、REDクレジットを国際的な炭素市場で取引することにより、森林破壊をある程度抑制するだけで熱帯林保全のための資金を毎年数十億ユーロ生み出すことが出来るということを示す。それと共に、REDのメカニズムが真に気候変動抑制効果をもたらすための主要な課題について述べる。そのような課題の中には、現在のビジネスをそのまま続けるというBAU(Business as usual)シナリオ以下に森林破壊を抑制した場合にのみ補償を支払うこと、あるいは森林劣化(forest degradation)から生じるリスク削減に取り組むこと、国際間の漏出、排出削減の永続性の確保などが含まれる。ガバナンスの問題はREDにとって一つの厄介な問題となりかねない。何故なら、大きなREDの潜在力を持ついくつかの国ではガバナンスが劣るということがあるからである。気候変動の軽減に加えて、RED基金は生物多様性の保全や人間社会の開発にも大きな貢献をする可能性がある。しかし、生物多様性の懸念や人間社会開発ニーズの大きな国ほどREDから得られるであろう収入がそれほど大きくないということからみて、明確な目標に沿った追加的施策が必要だと思われる。結論を言えば、市場でREDメカニズムをうまく機能させることにより、気候変動防止、生物多様性の保全、人間社会の開発に貢献出来るかどうかは、政府、民間、自然保護団体・地域開発団体が協力して、効果的な付随的措置とインセンティブを構築できるかどうかにかかっていると言える。
キーワード;生物多様性、炭素市場、気候変動、ガバナンス、京都議定書、熱帯雨林
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